『カッコウの許嫁』作者・吉河美希が語る、読者の共感を呼ぶ漫画表現 「〈あんなこといいな〉という憧れを描きたい」

『カッコウの許嫁』吉河美希インタビュー

「読者と同じ目線でキャラたちに驚かされています」

――物語の冒頭で、凪とエリカが歩道橋で出会うシーンがとても美しくて印象的でした。あの場所を選んだ理由はありましたか?

吉河:学生なので、始まりを4月にしたいっていうのから入って、桜が見えてほしかったんです。そこから逆算して桜が見える歩道橋に。 あれは実際にはない場所です。いろんなモデルの場所を組み合わせて、理想的な歩道橋を描きました。


――夢のあるシチュエーションが次々と描かれていますが、料理の絵についてはとてもリアルで思わずお腹が空いてしまいます。

吉河:料理に関しては、毎回こだわっていますね。同居生活が物語のメイン舞台になっている中で、生活=食って言うくらい大事な要素だと思っていて。もともと凪は、料理をするという設定はなかったんですけど、エリカが何もできない分、凪は一応定食屋の息子ということもあってごはんくらいは作れるんじゃないかと。

――作品を描いていく中で、キャラクターが鮮明に確立されていくというのはよくあることなのですか?

吉河:毎回そうですね。むしろ最初からガチガチに設定を作って描くのは難しくて。あくまで読者と同じ目線で、描いていきたいという思いがあるので。「あ、この子こんなことできるんだ」とか「こんなこと思ってたんだ」みたいなのを、描きながら一緒に発見していく感じですね。

――よく漫画家の先生方がおっしゃっている「キャラクターが勝手に動き出す」状態ってことでしょうか?

海野幸

吉河:まさにそんな感じですね。先ほど「ひろは少年誌の主人公をイメージした」とお話したばかりですが、描いてみたら結構ズシンとしたところもあって。本当はもっと軽やかな感じの想定だったんですけど、「あれ?」って(笑)。幸も、もうちょっとお母さん寄りのヤンキーっぽさが受け継がれている予定だったんです。

――その想定外の人間味が、ヒロインたちそれぞれの魅力を深めているように思います。

吉河:「このヒロイン1人いればいいじゃん」って言わせるくらいに、3人を可愛くみせるっていう思いがあって。毎回「これはどうだ!」みたいな感じで描いてます。

――反響として、読者の中で誰が一番応援されているという感覚はありますか?

吉河:SNSとかだと、幸が強いように思いますね。ただ、発信しない静かな読者さんもいますので、そのへんはちょっとわからないですね。

――ご自身としては一番思い入れがあるヒロインは誰、というのはあるのでしょうか?

吉河:いや……全員大変だなって。個人的には、恋人にするならもうちょっと手のかからない人がいいですね(笑)。

――(笑)。今後もキャラクターの魅力が次々と発見されていきそうですが、言える範囲でこのさきの展開を教えていただきたいです。

吉河:一応「おっ!?」ってなる展開が、これから2発ぐらいはある予定です。ド――ン……ドンッ!みたいな。いや、意外とバンバンって連続でくるかもしれない。ぜひ読み進めながら「あのとき言ってたドーーンってこれか!」って楽しんでいただけたら嬉しいです。

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