主人公は半裸で鳥頭!? 異例尽くしの『シャンフロ』が急発進した理由

異例尽くし『シャンフロ』急発進の理由
顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』コミカライズ1巻

 『防振り』も伏瀬『転生したらスライムだった件』(GCノベルズ)も、ネットでの連載から書籍化が行われ、コミカライズで人気が広がりアニメ化へと至った。カルロ・ゼン『幼女戦記』(エンターブレイン)も日向夏『薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫)も同様に、ネットから書籍化、そしてコミカライズやアニメ化へと至ってファンを広げた。顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』(富士見L文庫)も、小説版に続き高坂りとのコミカライズが出て人気に広がりが出た。

 漫画で見て映像で感じ興味を持った世界観の深く知るため、小説へと戻り売り上げが増すパターンが半ば王道となりつつあった中、『シャンフロ』は異色の世界をいきなりビジュアルで見せて一気に関心を引きつけた。この先に刊行されるかもしれない小説版へ戻って、作品を盛り上げていく流れが生まれそうだ。

 コミカライズ版の第1巻で、早々に半裸から脱したように見えたサンラクが、「夜襲のリュカオーン」なるユニーク・モンスターに挑み、敗れたことで受けた呪いが実に苛烈なものだった。何かは読んでのお楽しみ。サンラクという特異なキャラを、特異なままであり続けさせるために必須のステップだったと言っておく。

 今後の展開では、ゲーム内で巨大な甲冑に身を包んだ姿でサンラクを追う、サイガ-0というキャラクターとの関わりが気になるところ。別のゲームでサンラクとプレイしていたモドルカッツォや、2人の知り合いらしいアーサー・ペンシルゴンとの絡みも本格的に始まっていく。その先には、サンラクが仲間を増やし、ユニーク・モンスターを次々と打ち破って「シャンフロ」の世界で一目置かれるプレイヤーになっていくスリリングな展開が待っている。

 ここでアニメ化という事態も加われば、文字から絵となり、映像となって動く鳥頭で半裸のサンラクが、どれだけのインパクトをもたらすかが大いに気になる。アーサー・ペンシルゴンが得意としている悪逆非道の戦いぶりが、ビジュアルでどのように表現されかも。見た目はゴツいが中身は純情な乙女らしいサイガ-0とは対極の、悪のヒロインとして耳目を集めそうだ。

 ネットでの連載はすでに700話を超えている『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』の物語。練り込まれた設定の上で、起伏に富んだストーリーが繰り広げられる中を、作り込まれたキャラクターたちが暴れ回る様は、VRMMOものがあふれるエンターテインメントの世界においても、ブラックホールのような強大な重力で大勢を引きつけていくことは確実だ。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

■書籍情報
『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』
原作:硬梨菜
作画:不二亮介
出版社:講談社

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