『BLEACH』朽木白哉、“掟に縛られた男”を変えたのは? ルキアとの関係を考察

『BLEACH』朽木白哉、約束と掟からの解放

 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。

 今回ピックアップするのは朽木ルキアの義兄で護廷十三隊六番隊長の朽木白哉だ。

溌剌としていた子ども時代

 真面目で冷静沈着。声を荒げることも大笑いするシーンも見られず、物静かなイメージが強い。斬魄刀の名は『千本桜』だが、桜が散る様はどこか白哉と重なり、物憂げさを感じさせる。しかし、ずっとそうだった、というわけではないようだ。

 36巻では白哉の子どものころの様子が少しだけ描かれている。剣の稽古に励む白哉、そこにやってきたのは二番隊隊長四楓院・夜一。からかう夜一にムキになり、逃げる夜一を追う。そんな白哉を見て祖父の銀嶺がこぼす。

「白哉もあのすぐ熱くなる癖が抜けるが一皮むけるんじゃがのう…」

 また、志波海燕からは「ナマイキ」とは評されているとなど、いずれも現在の白哉から想像がつかない。冷静沈着で思慮深い様子の白哉となったのは、尸魂界の四大貴族のひとつである朽木家の跡取りであるからこそだろう。成長して「熱くなる癖」が抜けたのかもしれない。

 ただ、そう簡単に根っこの部分が変わるわけではない。貴族以外の血を混ぜることは掟に反するにも関わらず、流魂街出身でルキアの姉である緋真と夫婦となっている。掟に逆らってでも――そんな情熱的な部分があったのではないか。その後、緋直の遺言でルキアを義妹として朽木家に迎える。そして、2度掟を破った、だから今後は“何があっても”掟を破らないと決めた。この思考だけでも、白哉が情熱的でいて、義理堅く、そして厳格な人間であるということが想像できる。

掟と約束に挟まれ、見失った自分の本心

 しかし、自身に課した「二度と掟を破らない」という決め事が白哉を苦しめることになる。ルキアの処刑が決まっても、その決定に逆らわず受け入れたのだ。

 罪を犯したルキアを自ら捕え、ルキアを助けようとする恋次を退けている。それまでルキアとも一定の距離を取っていたため、冷たい義兄にしか見えなかった。ルキアも白哉のかつての妻に自分が似ているから引き取られただけだ、あまり兄を煩わせてはいけないと何をするにしても控えめだ。白哉もルキアも「掟は守らなければならない」と無理にでも受け入れていたのだ。それを壊したのが主人公である一護だ。

 自分の手でルキアを処刑すると言った白哉に一護は不快感を示す。

「てめーの手でてめーの妹を処刑するだと?ふざけんじゃねぇ」
「ルキアの前で二度とそんな口きかせねぇ」

 織姫が兄に襲われた際にも一護は兄が先に生まれるのは、後から生まれてくる妹や弟を生まれるためだ、と言っていた。ルキアが大切な存在であることはもちろんだが、一護にとって兄が妹を手にかける、というのはあってはならないことなのだ。

 掟だから殺す。妹でも?と問う一護に白哉はすげない。

「肉親の情か…下らぬ」

 しかし、瀕死の状態で白哉はルキアに本当の気持ちを吐露した。

「判らなくなっていた 掟を守るという父母への誓いと妹を護るという緋直との約束とどちらを守るべきなのか…」

 そして、口にせずとも伝わるのが妹を大切に想っているということ。だからこそ、最終的には殺されかけたルキアをかばった。そして、実力がありながらルキアが一隊員でしかなかったのも、危険な任務に当たらないようにと白哉が根回しをしていたからだった。

 父母、愛した妻を亡くした白哉にとってもルキアはかけがえのない家族。掟に縛られ、心の真実から目を逸らしていた白哉だが、一護との対決によって自身と向き合うことができたのかもしれない。

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