『BLEACH』もうひとりの主人公・朽木ルキアが心を取り戻すまで……死神の一生を考える
連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。
今回ピックアップするのは、朽木ルキア。黒崎一護に死神の力を与えた人物である。
家族を得たはずなのに――孤独だった朽木ルキア
一束の長い前髪と跳ねたセミロングが特徴のルキア。小柄な身体で、高い運動能力を持っている。それも当然のこと。虚と戦う死神なのだから。性格はクールなように見せかけて、登場時からお茶目で愛嬌があった。一護の家で居候しながら、日常生活では好物に浮かれたり、ウサギグッズに心を奪われたりする一面を見せる。戦闘では一転険しい表情となるが、普段の一護との関係はまるでボケとツッコミのお笑いコンビのようだ。
ルキアの出生は少し複雑だ。もともとは流魂街という貧民街の出身。1から80まで地区があるが、数字が大きいほど、治安が悪い。ルキアがいたのは78地区だ。長い時が流れる中で、死んでいく仲間も見てきたルキアは生きていくために死神になる決意をする。
死神を養成するための学校である真王霊術院に入った後、大貴族の朽木家の養子に迎えられ、尸魂界の護衛、現世での魂魄の保護や虚退治などを行う護廷十三隊六番隊長である朽木白哉の義理の妹となる。
2人からは兄妹らしさは感じられない。白哉はルキアに冷たく接しているようにしか見えないし、ルキアは白哉に遠慮をしている。人間である一護に死神の力を譲渡した罪で処刑が決定したときも白哉が異を唱えることはなかった。それは、貴族以外から妻をめとるのは掟違反だと知りながらも流魂街から緋真を迎えたこと、そして緋真の死後、彼女の妹であるルキアを義妹を迎えたことで2度掟を破ったためだった。二度と掟を破らないと決めた白哉は処刑に反対することはできなかったのだ。
それまではできるだけルキアを危険なことから遠ざけようとしていたにも関わらず、処刑を目の前にしたルキアには冷たい態度を取り続けることしかできない。そして、悲しいことにルキアも白哉の態度は当たり前のことだと受け入れてしまう。
そんな2人の関係をぶち壊したのが一護だった。白哉は処刑からルキアを救い出そうとする一護と対立しつつも、最終的には殺されそうになったルキアを、自分の身を挺して救った。それから、ようやくルキアは自分がなぜ朽木家の養子として迎え入れられたのか、白哉の義兄としての深い愛を知ることとなるのだ。
死んだはずの上官との再会で“心”を取り戻す
白哉との和解で、ルキアの苦しみはひとつなくなった。しかし、もうひとつの苦しみがあった。それは、尊敬する上官・志波海燕をかつてその手で殺害したこと。海燕は白哉との関係に悩むルキアの心を救う存在だった。
「オメーが俺の隊に居る限り 俺は死んでもオメーの味方だ」
朽木家の養子に迎えられたが、それまでの仲間たちとはすれ違い、周りからは心無い言葉を投げかけられるばかり。そんなルキアにとって、海燕はどれだけ心強い存在だっただろう。にも関わらず、ある虚との戦いで、虚と同化した海燕を助けるために殺した。海燕自身も望んだことだったが、この事がルキアの心に暗い影を落とし続ける。
「貴方に刃を突きたてたのは苦しむ貴方を見ていることに耐えられなかったからだ」
「私が救ったのは私自身だ」
その過去を悔み、自分が救われる存在ではないと戒め続ける。その戒めを解いたのはほかでもない、海燕を死に追いやり、撮り込んだ虚との再戦だった。思い出したのは海燕の言葉。
「心は仲間に預けていくんだ」
確かに自分の手で海燕の命を奪った。しかし、死の間際に海燕の“心”を預かったのはルキア自身だということを思い出す。過去から解き放たれたルキアは、以前よりも強くなった。