『BLEACH』は日番谷冬獅郎の始まりの物語でもある 氷の中にある情熱の炎

『BLEACH』は日番谷冬獅郎の始まりの物語でもある 氷の中にある情熱の炎

 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。

 今回ピックアップするのは死神・日番谷冬獅郎だ。

クールな見た目だが秘めた優しい心

 尸魂界の護衛と現世での人間の魂魄の保護を目的とする護廷十三隊。その十番隊の隊長を務めるのが日番谷冬獅郎だ。天才と称され、史上最年少で隊長となっている。

 しかし、自ら進んで死神になったわけではない。流魂街では年老いた祖母と暮らし、その祖母がひとりになっては寂しがるだろうと、そばを離れようとは考えなかったのだ。

 当時の冬獅郎は「氷のようだ」と揶揄されていた。銀色の髪と碧緑の瞳だからか、もしくはクールな性格からか。周りからは怖がられ、分け隔てなく接するのは祖母と幼なじみの雛森桃だけだった。祖母とずっと2人で暮らしていくつもりだった。

 少しずつ痩せていく祖母を気遣う冬獅郎だったが、弱っている原因は冬獅郎自身だった。力が強すぎるあまりコントロールできない。開きっぱなしになった霊圧が寝ている祖母の身体にダメージを与えていた。冬獅郎自身も気がついてなかった力を指摘したのが後の十番隊副隊長、松本乱菊であるる。

「あんたみたいな強い子は力の扱いを知らなきゃいけない」
「声が聞こえるでしょ?」
「その声の在り処を見つけることが力の扱いを知るってこと」

 自分がそばにいては祖母の身体に障る。でも、自分が死神になれば、祖母をひとりにすることになる。葛藤があっただろう。しかし、死神になるという冬獅郎に祖母は穏やかに微笑みこう語りかけるのだった。

「お前がばあちゃんを思うて何かを我慢する…それがばあちゃんには一番つらい」

 死神になる理由は人それぞれだ。冬獅郎の場合は、自分で自分の居場所を創るためだったのかもしれない。

幼なじみ・雛森桃への愛情

 幼なじみで互いにかけがえのない存在である冬獅郎と雛森桃。雛森は五番隊副隊長であるが、十番隊隊長の冬獅郎に「日番谷くん」と気さくに話しかける。恋とか愛というよりは、姉と弟という雰囲気だ。冬獅郎には「雛森を守らなければ」という想いが垣間見える。同時に、いつもクールな冬獅郎が心を乱すトリガーが雛森でもある。

 雛森が五番隊隊長である藍染を慕うあまり、冬獅郎と対峙したときも動揺が激しかった。雛森が藍染の手にかかったときは感情を爆発させる。

「藍染俺はてめえを…殺す」
「あまり強い言葉を遣うなよ。弱く見えるぞ」

 その言葉の通り、冬獅郎は藍染に一撃で倒されてしまう。さらに、その後の戦いでは藍染の術にはまり、自身の刀で雛森に重傷を負わせ、その混乱から藍染に切りかかり、左腕左足を切断されるという重症を負った。実力がありながらも雛森が関わると長所でもある冷静さを失う。戦いのあと、回復してからはひとり鍛錬に励む。

「このままじゃ俺は…いつまで経っても雛森を護れねぇ」

 冬獅郎にとって雛森は弱点となる存在だが、同時に強くなるための存在でもある。それは2人が死神である限り変わらないことだろう。

戦友・松本乱菊

 冬獅郎が死神となるきっかけを与えた人物であり、現在の部下である松本乱菊。かつて志波一心(のちの黒崎一心)が十番隊の隊長であったときは乱菊が副隊長で冬獅郎が第三席だった。つまり冬獅郎は乱菊を抜いて出世したことになるが、事務作業にも優れているなど、隊長に向いているという点もあったのだろう。

 乱菊も自分が上司であったころは砕けた口調だったが、冬獅郎が隊長になってから敬語を使っており、大人らしさも垣間見せる。が、それ以上に戦いにおいて冬獅郎に信頼を置いているのが分かる。それは冬獅郎も同じだ。隣を任せられる、自分の背中を任せられるのは乱菊だと考えているのがセリフの節々から感じられる。

 隊長と副隊長の関係性は隊によってさまざまだ。隊長に心酔している者、憧れを抱いている者、家族のように感じている者。その中で隊長と副隊長でありながら一番対等な関係性を築いていると言ってもいいかもしれない。

 からかってくる乱菊に対しムキになることもあれば、冷静に分析・叱責していることもある。護廷十三隊に入り、仲間は多くできただろう。そんな中で心から信頼できる、祖母や雛森に匹敵する存在は乱菊にほかならないのではないだろうか。

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