SATCが帰ってきた! 『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』で描かれる現代の恋愛事情とは

25年後の「SATC」描かれる現代の恋愛事情
『セックスとニューヨーク』(ハヤカワ文庫NF)

 1994年FIFAワールドカップの開催国となったアメリカで、『週刊ニューヨーク・オブザーバー』に連載されたコラムが話題になっていた。キャンディス・ブシュネルによる都会に暮らす独身女性の日常や、恋愛事情を描いた同コラムは『セックスとニューヨーク』としてまとめられ、それを脚色したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下、SATC)が1998年にスタート。ドラマは2004年に発表されたシーズン6まで世界中で人気を博し、放送終了後もファンの熱は冷めやらず2度も映画化された。

 キャンディス自身がモデルと言われている主人公のキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)、セックスに積極的すぎる奔放なサマンサ(キム・キャトラル)、お嬢様気質でハイスペックな男性との結婚を夢見るシャーロット(クリスティン・デイヴィス)、毒舌で男性に流されない強さを持つ弁護士のミランダ(シンシア・ニクソン)。物語の中心となる4人の女性がおくるゴージャスで刺激的な日常、お洒落なファッション、生活スタイルは全く違うのに思わず頷いてしまう名言など、魅力たっぷりに彩られたSATCの世界は色褪せることなく、今もAmazonプライム等の配信を通して、20代〜30代の女性に影響を与えている。

 そのため、第3弾の映画化も期待されていたが、出演者同士の確執で制作は断念。たとえ今放送されたとて、SATCの4人が持つ恋愛至上主義的な考え方は、恋愛がなくても充実するコンテンツが溢れ、恋愛ドラマもどんどん減少し、ましてや“密”を避けるコロナ禍の現代では受け入れられないかもしれない。しかし、何となく鬱々としている日本にパワーを与えるかのように、『25年後のセックス・アンド・ザ・シティ』(大和書房)が6月24日に発売された。

 本作は50代後半に突入したSATC原作者キャンディスが、ホームグラウンドであるNYのマンハッタンと、架空の街“ヴィレッジ”を舞台に恋愛やセックス事情を描いたコラムを、長澤あかねが翻訳したもの。

 残念ながらキャリーやサマンサ、シャーロット、ミランダの4人は登場しないが、彼女たちのように恋話に花咲かせる女性たちが登場する。主人公はもちろん作者のキャンディスだ。

 25年後のセックス・アンド・ザ・シティは、彼女の悲劇からスタートする。夫が嫌いだった愛犬が突然死し、それが何かのサインだったかのように離婚を切り出されたキャンディス。新しいスタートを切ろうとするが、「女性で」、「独身で」、「自営業」、さらには50歳を超えていることから住宅ローンが組めない。キャンディスはこれまで稼いできたお金で旦那と暮らしていたマンションのローンを返済し、輝かしいマンハッタンを後にする。恋愛コラムの依頼が来ても、また新たな恋愛を一から始める気になれない。そして、キャンディスはコネチカット州の小さな自宅で「男ナシで行く」と決める。

ふと「どうかしてる」の由緒ある定義を思い出した。――同じことを何度も繰り返しながら、違う結果を期待すること。

 しかし、時を同じくしてアパートの取り壊しで家を追われ、飼い犬が3000ドルもする手術を受けることになり、抗うつ剤を飲むようになった友人・マリリンと共に“ヴィレッジ”(ハンプトンやロングアイランド島のビーチリゾートがモデルだそうだ)へ移ることに。あれよあれよと言う間に、「シティはもう昔とは違う」と嘆くサッシー、旦那とたった2年で離婚したクウィーニー、真実の愛を求めた末に捕まえた“ミスター・ビック”から離婚を迫られたキティ、フランス人との12年間の結婚生活にピリオドを打ったティルダ・ティアが集まり、彼女たち6人はまた、SATCのように都会で恋を始める。

 物語の原題は、『Is There Still In The City?』。「ニューヨークにはまだ、私がセックスできるチャンスはあるの?」と疑問を持ったキャンディスは、第2章から現代の恋愛、そしてセックス事情を明らかにしていく。

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