アニメ版『はめふら』、原作ファンも虜にする魅力 メディアミックス成功のポイントは?

『はめふら』幸せなメディアミックス

 今期アニメの“伏兵”として快進撃を続けているのが、『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』、通称『はめふら』だ。放映前の注目度はさほど高くなかった本作だが、アニメの第1話が評判を呼び、以後人気が爆発。これにともない、山口悟による原作小説も注目を集め、4月発売の最新刊9巻のみならず既刊の売上も好調と、大旋風を巻き起こしている。

 『はめふら』はオンライン小説投稿サイト「小説家になろう」に連載後、2015年に一迅社文庫アイリスから商業出版され、3巻以降は書き下ろしとして継続中のシリーズである。今や女性向けネット小説の人気ジャンルとして定着した「悪役令嬢もの」を決定づけた作品の一つであり、これまでに9巻が刊行された。さらに、小説の挿絵担当のひだかなみによる漫画化も進められ、コミックスは第4巻まで発売。クオリティの高いコミカライズは好評を博し、『はめふら』の人気を後押しする。このように、本作はもともと女性読者をターゲットにした作品であったが、アニメ化をきっかけに男性ファンの心も掴み、男女双方から支持されるコンテンツへと成長を遂げた。今回はアニメ『はめふら』を取り上げ、今最も勢いに乗っている作品の魅力について、詳しくみていきたい。

 はじめに、『はめふら』の基本設定を確認しよう。公爵令嬢としてわがままに育ったカタリナ・クラエスは、8歳の時に庭で転んで頭を打ち、その拍子に前世の記憶を取り戻す。カタリナの前世は、享年17歳のオタク女子高生だった。やがてカタリナは、今自分がいるのは前世でプレイ中だった乙女ゲーム「FORTUNE LOVER」の世界であり、ゲームに登場するライバル役の悪役令嬢に転生してしまったことに気づく。

 ゲーム内のカタリナは、どの攻略対象を選んでも国外追放もしくは死亡という、バッドエンドを迎える設定の人物だ。今生こそは平和に寿命を全うしたいと願うカタリナは、破滅フラグを回避しようと、彼女の前にあらわれた4人の攻略対象を相手に、斜め上の対策を繰り出していく。そんなカタリナの予想外の行動や表裏のないまっすぐな性格は、王子や義弟、宰相の息子が抱える孤独や悲しみ、コンプレックスを溶かしていくのであった。なお、カタリナが魅了するのは男性だけでなく、ゲーム本来のヒロイン・マリアや、カタリナと同じライバルキャラのメアリやソフィアまでもが “人たらし”なカタリナに夢中になってしまう。もっとも、本人は破滅エンドを回避することに必死なのと、恋愛に鈍感なのが重なり、寄せられた好意には全く気づいていないのだが――。

 というのが、『はめふら』のあらすじである。男女を問わず人をたらし込み、無自覚なラブコメを展開するカタリナの魅力が作品の肝となるが、アニメ版の『はめふら』ではアニメーションならではの表現を駆使し、“おバカ”かわいいカタリナの姿を輝かせている。前世で「野猿」と呼ばれた木登りの腕前で周囲の度肝を抜き(デフォルメされた木登りの動きがとてつもなくキュートだ)、お菓子に目がなく意地汚く食い荒らし、土の魔力を高めるために始めた畑仕事に傾倒、そしてここぞという時には「悪役顔」の本領を発揮して凶悪な表情を披露する。カタリナの公爵令嬢らしからぬ行動の数々が、アニメによってさらなる躍動感を得て、どこまでもチャーミングに描かれてゆく。

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