「魔法科」「はめふら」メディアミックスが売り上げの起爆剤に ラノベ週間ランキング

「魔法科」「はめふら」売り上げ好調

本 ライトノベル 週間ランキング(2020年4月13日~2020年4月19日・Rakutenブックス調べ)
1位『魔法科高校の劣等生31 未来編(電撃文庫)』佐島勤、石田可奈 KADOKAWA
2位『ソードアート・オンライン24 ユナイタル・リングIII(電撃文庫)』川原礫、abec KADOKAWA
3位『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…9特装版(一迅社文庫アイリス)』山口悟、ひだかなみ 一迅社
4位『この素晴らしい世界に祝福を!17 この冒険者たちに祝福を!(角川スニーカー文庫)』暁なつめ、三嶋くろね KADOKAWA
5位『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。アンソロジー(4)(ガガガ文庫)』渡航、ぽんかん8 小学館
6位『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。アンソロジー(3)(ガガガ文庫)』渡航、ぽんかん8 小学館
7位『わたしの幸せな結婚(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
8位『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件2(GA文庫)』佐伯さん、はねこと SBクリエイティブ
9位『わたしの幸せな結婚 二(2)(富士見L文庫)』顎木あくみ、月岡月穂 KADOKAWA
10位『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインX -ファイブ・オーディールズー(10)(電撃文庫)』時雨沢恵一、黒星紅白 KADOKAWA
ランキング:https://books.rakuten.co.jp/ranking/weekly/001017/#!/1/

 小説や漫画が原作となったアニメが放送されると、この原作を読んでみたい、続きが知りたいといった人たちで、書籍の売り上げが一気に増える。

 2006年4月に谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』がテレビアニメ化された時は、シリーズ6冊目の短編集『涼宮ハルヒの動揺』に収録された「朝比奈ミクルの冒険 Episode:00」がいきなり放送され、これは何だと関心を引きつけ、その後の展開の面白さもあって、書店から文庫が消える現象が起こった。

 第16巻が出た伏瀬『転生したらスライムだった件』シリーズも、アニメ化の出来の良さが原作小説の売り上げをブーストした。Rakutenブックスの4月14日から4月19日のランキングで、1位になった佐島勤『魔法科高校の劣等生(31)未来編』も同様に、2014年放送のテレビアニメが今に至る人気の継続に貢献した。

 ネット小説だった『魔法科高校の劣等生』シリーズを文庫化する際、編集者はハードボイルド感やSF感を抑えつつ、イラストを『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のアニメ版で総作画監督を務めた石田可奈に依頼して、読者層を下げようとした。それで手に取りやすくはなったが、緻密な設定をまだ難しいと感じ、小説に入るのを敬遠していた人もいたようだ。

 とてつもなく強力な魔法の力を持った司波達也という少年と、妹の深雪を中心にして繰り広げられていくストーリーに登場する魔法の原理、作用の仕方には、単純に超能力と呼べない複雑さがあった。その達也と深雪の出身母体となる四葉家を始め、日本には幾つもの魔法師たちの師族が存在して、国家運営に暗然とした力を及ぼしている。日本を狙って大東亜連合、北アメリカ大陸合衆国(USNA)、新ソビエト連邦といった勢力が、それぞれに強力な魔法師を抱え謀略を巡らせる。そうした政治状況や外交状況を背景に持った作品を、続々と登場してくるキャラクターたちとともに理解するのは難しかった。

 これが、2014年のアニメ放送を機に変わった。魔法の発動を映像で見せ、動き喋るキャラクターによってストーリーを進めるアニメが、作品に入り込む壁を下げた。シスコンだがとてつもなく強い"お兄さま"が、圧倒的な魔法の力で"劣等生"などと蔑まれた状況を突破していく活躍ぶりに憧れさせた。

 巻が進むにつれて、達也が深雪という妹を絶対の存在と思わされていて、彼女を守ることがすべてであり、友人を助けるのも日本を守るのもその延長に過ぎないという冷徹さも見えてきた。ただ強いだけに見えたヒーロー像に奥行きが出てきた今は、どうすれば達也を敗北させられるのかといった興味も浮かぶ。その期待に最新刊『魔法科高校の劣等生(31)未来編』は応えられているのか?

 何しろこの巻で達也が相手にするのは、USNAや新ソビエト連邦の軍隊だ。両陣営には、一撃で都市や艦隊を壊滅状態に追い込める、戦略級魔法を使える魔法師たちがついている。艦隊から送り込まれる兵士たちも精鋭ぞろい。そんな敵を、同じく戦略級の魔法を仕える達也が、国防軍の力を借りず、深雪や一族の魔法師たちで迎え撃とうとする『未来編』を読むことで、世界が目の当たりにした達也をはじめ四葉家の魔法師たちの力をめぐって、さらなる混迷が起こりそうなビジョンが見えるだろう。

 第31巻のあとがきで佐島勤は、第32巻のサブタイトルに触れず「秘密です」と書いた。理由はネタバレするから。刊行予定によってサブタイトルが明らかにされ、物語が発表されて判明する達也と深雪に待ち受ける未来は、いったいどのような様相を呈しているのか? 今から刊行が待ち遠しい。

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