『ジャンプ+』はなぜ成功したのか? 『SPY×FAMILY』など、アプリ発の話題作を生み出す“施策”
2019年の『ジャンプ+』は熱かった。
『DEATH NOTE』の新作や『歯医者さん、あタってます!』といった読み切りがバズりにバズり、アプリオリジナル連載作品『彼方のアストラ』がアニメ化、『左ききのエレン』がTVドラマ化されて話題になり、さらに『SPY×FAMILY』(メイン画像)は単行本が2巻で35万部を超えるヒットとなった。
Twitter上での編集者、編集部アカウントの情報を引用しよう。
中路(ジャンプ+編集者)@nakaji2017·10月8日
ジャンプ+、先週のWAUが「DEATH NOTE」新作読切掲載時の最高値を更新して過去最高に。閲覧数がずっと上昇傾向なことに加えて大爆発した読切「歯医者さん、あタってます!」でwebからの流入数が跳ね上がった。この調子でMAUの最高値更新にも期待。
少年ジャンプ+@shonenjump_plus·10月5日
【本日配信】読切「歯医者さん、あタってます!」わずか15時間で驚異の100万閲覧突破…‼︎ツイッタートレンドの1位を一時的に「歯医者さん」が獲得するという幸せ、ありがとうございます‼︎
中路(ジャンプ+編集者)@nakaji20179月13日
今年に入って「彼方のアストラ」「SPY×FAMILY」と大きな賞をとる作品が出てきました。全体の数字が好調なのもジャンプ+を引っ張れる作品が増えてきたのが要因。話題になりそうな期待の大型新連載もまだまだ控えているので、今後も最強の新作媒体として投資を強化してきます。
この成功は、集英社がもともと持つ「おもしろいマンガを作る力」に加えて、アプリ/ウェブでマンガを読まれることを前提とした数々の施策(戦略)が掛け合わされたことによって生まれている。
流入と定着
マンガアプリに必要なのは「流入」と「定着」である。新しく(または久しぶりに)使ってもらうユーザーを増やすこと。そして、入ってきてくれた人に、使い続けてもらうこと。
こういう視点から、『ジャンプ+』のコンテンツの配信方式を見ていくと、めちゃくちゃよく考えられていることがわかる。
『ジャンプ+』が無料で作品を読めるようにしている作品内容と配信スタイルの組み合わせは、4つある。
一つめは「週刊更新の再配信もの」。『ドラゴンボール』や『NARUTO』など過去の人気作品(または『ONE PIECE』『東京喰種』のような長期連載作品)の再配信。これは最初の3話以外は毎週3話分が無料で開放されている。たとえば今週4、5、6話が読めるとすると、来週は5,6、7話が無料で読め、4話は読めなくなる。その次の週には6,7,8話が読める、というものだ。
二つめは「初回無料のアプリオリジナル連載作品」。『SPY×FAMILY』『彼方のアストラ』『花のち晴れ』などの『ジャンプ+』が初出のアプリオリジナル連載作品。これらは最初と最新の3話以外は「初回無料」で読める。読み返したければ課金するかコミックスを買うしかない。
三つめは「初回無料のコミカライズ連載」。『HELLO WORLD』『屍人荘の殺人』など映像作品やゲームのコミカライズ連載(ジャンプ+初出のアプリオリジナルだが集英社のIPではないメディアミックス案件)。これも初回無料である。
四つ目は「無料の読み切り」。『DEATH NOTE』や『歯医者さん、あタってます!』などの読み切り作品である。
これが組み合わさるとどうなるか? 「読んでいなかった名作を読んでみたい(または読み返したい)」「話題のメディアミックス作品だから読んでみよう」「バズっている読み切りを読んでみよう」という理由で「流入」需要を喚起する。
そして「毎週1話ずつ更新だから『ドラゴンボール』読むために来週も立ち上げるか」「アプリオリジナル連載作品も初回無料だから読んでみよう」と誘導することで定着がはかられる。こうしてアクティブユーザー数が増えることになる。
さらには利用時間(滞留時間)を増やす施策もある。