特殊清掃の仕事を描く『不浄を拭うひと』 簡略化された絵柄に漂う“死の多様性”

『不浄を拭うひと』簡略化された絵柄の意味

 沖田×華の最新作『不浄を拭うひと』(ぶんか社)の第1巻が発売された。『本当にあった笑える話Pinky』(ぶんか社、以下『ほんわらぴんきー』)で連載されている本作は、特殊清掃の仕事を描いた作品だ。

 主人公の山田正人は39歳で一児の父。大卒、サラリーマンとごくごく普通の人生を送っていたが、半年前から特殊清掃の仕事をしている。山田が請け負うのは遺品整理、ゴミ屋敷の清掃、そして亡くなった人の部屋を原状復帰させる“特殊清掃”。警察が検死のために遺体を回収した後、山田は清掃の現場に出向く。

 第1話で描かれたのは、60代男性が亡くなった単身者用アパートだ。部屋に足を踏み入れた山田は、その部屋では過去に別の人が亡くなっていたことを察知する。山田は子供の頃から霊感体質だった。20代の時は霊感が消えていたが、この仕事をはじめるようになって、再び霊の存在を感じるようになったという。その後、山田が最初に体験した遺体清掃のお仕事と、その時に起きた霊体験が回想されるのだが、ここでの女性の遺体描写と、その後に山田が体験した超常現象が壮絶で、読み進めていくと、みるみる自分の顔が歪んでいくのがよくわかる。

 この喜怒哀楽では簡単に回収できない複雑な感触。自分の顔がひきつり歪んでいく読書体験は、沖田の漫画に共通するものだ。沖田は自身の発達障害を題材にしたエッセイ漫画『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』(双葉社)や、昨年NHKでドラマ化された『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』(講談社)といった医療漫画で知られる漫画家だ。

 どちらも実体験に裏打ちされた自伝的な作品だが、沖田の漫画はキャラクターや背景が簡略化された漫画らしい絵柄と、エッセイ漫画調のコマ運びなので、とても読みやすい。しかし描かれる題材はハードでショッキングなものが多く、そのギャップにまず驚かされる。同時にショッキングな題材を淡々と見せていくので、感情を揺さぶられながらも、どう捉えていいのかわからなくなる。

 現在、週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載されている終末期病棟を舞台にした『お別れホスピタル』は、救いのないように見える話でもイイ話風に落ち着くので、他の作品に比べると安心して読めるのだが、それでも、どう捉えていいのか困惑する話も多い。

 『不浄を拭うひと』は、特殊清掃が題材で男性が主人公という、今までの作品とはだいぶ毛色が違うが、描こうとしていることは医療モノと同じ「人の生き死に」ではないかと思う。本作の原案協力には特殊清掃・遺品整理業者「ラストクリーニング茨城」代表の天地康夫の名前がクレジットされている。

 『ほんわらぴんきー』2019年12月号に掲載されたインタビューによると、本作は天地にインタビューした際に印象的だったエピソードを一度バラバラにして、自分の想像と組み合わせて物語を作っているという。同インタビューで沖田は「汚いものをどれだけ汚くなく描くか」が大変だと語っている。特殊清掃の現場を描くため、本作には虫、排せつ物、臓物の描写が盛りだくさんだ。物語もさることながら、何カ月も放置された遺体の惨状や現場の臭いを想像して「うわぁ~」となってしまう。



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