RADWIMPS、クリープハイプ、10-FEET……アニメの劇伴制作がロックバンドにもたらす新たな創造性

 RADWIMPSが『君の名は。』で映画全編の劇伴を手掛けたことを機に、アニメ映画とロックバンドによるタッグへの信頼感は一層に強まったように思う。その後に作られた作品で、同一アーティストが主題歌と挿入歌を担当するタイアップは急激に増加した。しかし、映画全編を1組のロックバンドが担当することは未だに珍しい。作品の細部にまで濃密に関わるそのようなケースは、バンドにも特別な影響を及ぼしていくものだ。

 新海誠監督で3作品の劇伴を担当したRADWIMPS。『君の名は。』(2016年)は映画音楽制作の経験が全くない中、手探りで進められたという。ギター、ベース、ドラム、ピアノという使い慣れた楽器のみならず、弦楽器や管楽器を用いて劇伴としてのインストゥルメンタルを探究した。そこで得たストリングスアレンジの知見は後の「Mountain Top」や「猫じゃらし」などでの壮大なオーケストレーションにも間違いなく影響を及ぼしている。劇伴制作を通し、RADWIMPSとしてのアレンジの幅はより広がった印象を受ける。

RADWIMPS - Mountain Top [Official Music Video]
RADWIMPS - 猫じゃらし [Official Music Video] (#RADnekojarashi ver.)

 また、新海誠とのタッグ以降、スケールが大きくストレートな表現が増えたことも特記すべき変化だろう。『すずめの戸締まり』(2022年)公開時のインタビューでは「愛にできることはまだあるかい」(2019年の『天気の子』主題歌)や「カナタハルカ」(『すずめの戸締まり』主題歌)を引き合いに出し、「自分のためだけには、あそこまでの言葉は出てこないし、『わかってくれ、伝われ』みたいな、意地でも絶対に届けるっていう気概には絶対になれない」と語っていた(※1)。

RADWIMPS - 正解 [Official Live Video from "ANTI ANTI GENERATION TOUR 2019"]

 この言葉を踏まえると「正解」(2018年)のような真っ直ぐに青春を肯定する合唱曲や、「夏のせい」(2020年)のような優しく切ない楽曲など、あえてひと捻りを加えない魅力を持った楽曲が多く生まれた変化は映画主題歌の経験があってこそではないだろうか。一方で『君の名は。』の大ヒットを受けて巻き起こったマスコミによるプライベートの侵犯を皮肉った「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」(2018年)など、バンドの鋭さにも影響を与えていることも忘れてはならない。

RADWIMPS - 夏のせい [Official Music Video]
RADWIMPS - PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~ [Official Music Video]

 もはやサウンドトラックとオリジナルアルバムが相互に影響し合うようになりつつあるRADWIMPS。『すずめの戸締まり』の劇伴ではロックバンドらしい演奏すらも控え、民族楽器による無国籍で厳かなインスト楽曲を多く生み出した。ここで得たアイデアがRADWIMPSに影響を及ぼせば、さらにバンドとして自由な表現を手にしていくだろう。

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