『SXSW』2年連続出演のluvisはどんな進化を遂げた? 音作りへの影響と今後の課題を語る

luvis『SXSW』連続出演の経験

 世界最大級のクリエイティブ・カンファレンス&フェスティバル『SXSW2025』(サウス・バイ・サウスウエスト2025/以下、SXSW)が、現地時間2025年3月7日〜15日の9日間にわたり開催された。今年は、日本からの出展企業・団体が24社と過去最多に。さらにMusic Festivalに出演した日本のアーティストは21組となり、これまでにない規模での展開となった。

 その中心を担っていたのが、オフィシャルショーケース『TOKYO CALLING × INSPIRED BY TOKYO showcase supported by MUSIC WAY PROJECT』。『TOKYO CALLING』『INSPIRED BY TOKYO』はこれまでにもSXSWでショーケースを開催してきたが、2つのステージを有するライブハウス・Mohawkで同時開催されたのは今回が初。また本ショーケースのサポートは、一般社団法カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)とTOYOTA GROUPによる「MUSIC WAY PROJECT」によって行われた。

 さらに今年は、音楽デジタルディストリビューションサービス・TuneCore JapanとSXSWが共同で日本のアーティストを支援するオーディション企画を開催。通常のSXSW ホームページからエントリーする際に必要なエントリー料が、無料(その他出演時の諸費用は必要)で応募可能になるなど、参加のハードルを下げることにもつながった。

 リアルサウンドでは、2年連続でSXSWに出演したluvisにインタビュー。SXSWに参加する意義、海外での活動に対するビジョンなどについて聞いた。(森朋之)

——luvisさんは2年続けてSXSWに参加。今年の手ごたえはどうでしたか?

luvis
luvis(撮影=Rintaro Miyawaki)

luvis:去年行ったときに一通り会場を見て、SXSWの雰囲気をわかったうえで臨めたのはまずアドバンテージでしたね。ライブに関しては、会場のお客さんとのコミュニケーションのやり方が変わりました。前回はギターソロを丁寧に構築したり、抑揚をつけることを意識していて。今年は「全部アッパーでいこう」と決めてセトリも調整したら、いい感じの温度感でやれたんですよね。お客さんに声を出してもらう、歌ってもらうパートを作ったり、全体的に高いボルテージでやれたのかなと。僕自身、クールに見られることが結構あるんですよ。音源ではあんまり叫んだりしてないし、インスタの写真とかも無表情なので(笑)。でもライブでは思い切り叫びたいし、そのあたりもちゃんと伝えていけたらなと。アメリカに行くたびに殻を破っている感じもあります。

ーーライブを通して、キャラクターや音楽性をアピールすることが大事だと。

luvis:特に音源(トラック)を流しながらライブをやる場合、音源の枠のなかに収まっちゃうと面白くないと思うんですよ。今回のSXSWも一人でステージに立ったんですけど、音源に合わせて歌うだけだとどうしてもショーケースっぽくなるし、壁ができてしまう。自分の声やギタープレイでそこを超えていくことが大事だと思います。そもそもオーディエンスのテンションが高いので、こっちも熱量を持ってやらないと押されてしまうので(笑)。あとはギターの音色ですね。去年も感じたんですけど、アメリカは空気が乾いていて、たとえば鳥の鳴き声や工場の音とかもダイレクトに聴こえてくる。なのでライブの音作りもかなり違うんですよ。

——どういうことですか?

luvis:日本は湿気が多いから、アメリカに比べると音が伝わりづらいところがあって、どうしても音量を上げがちなんです。しかも高音を強調してシャリシャリした音にセッティングすることも多いんですけど、アメリカで同じようにやると音がデカすぎるし、耳が痛い音になることがあって。実際、去年のSXSWで日本のバンドがやっている会場から耳をふさぎながら出てくるお客さんもいました。今のUSのインディーバンドでは中音域に重点を置いていることが多いし、シャリシャリではなく、ジューシーな音作りになっていて。僕もそういう音が好きなんですよ。SXSWでそれを実感したことで、自分のギターの音作りにも影響を受けてますね。

——今後のライブにもいい影響がありそうですね。

luvis
撮影=Ryota Mori

luvis:そうだと思います。あと、ライブ中に新曲の公開録音をやったんですよ。曲のなかにSXSWのお客さんの声を入れたくて「歌って」って言ったら、すごくデカい声で歌ってくれて。MVも向こうで録ってきました。SXSWに来ている人に声をかけて、「MVを撮ってるから、踊ってほしい」ってお願いして。街自体の熱量が高いし、みんなテンションが高いから「いいよ」ってどんどん参加してくれました。こっちから声をかけなくても「撮ってよ」って言ってくる人たちもいて、すごくいい感じでしたね。やっぱり音楽が身近にあるんだなって実感しました。

——なるほど。ライブの後、現地のオーディエンスの反応を感じられる機会もあったのでは?

luvis:そうですね。他のアーティストのライブを観ていたら、「luvisだよね? 昨日のライブよかったよ」って知らないおじさんに言われたり(笑)。いろんな国のミュージシャンや音楽関係者、プロモーターなどもたくさん来ているし、チャンスはあるなと思います。実際、去年のSXSWのときに(アメリカの公共ラジオ放送)NPRの方が見てくれて、番組(『World Cafe』)で取り上げてもらったので。

——アーティスト自身が積極的にアピールすることも必要なのかも。

luvis:そうだと思います。まずライブを観てもらわないといけないので、会場を歩いてビラを配ったり。誰が関係者かわからないんですけどね(笑)。あと“luvis”と書いた紙をTシャツに貼って歩いてたんですよ。ライブ情報がわかるQRコードも書いて(笑)。そしたら「luvis! 君の音楽、聴いてるよ。ライブ観に行くね」と言ってくれる人もいて。ただ、しっかりクレバーに動いて、アプローチできたか? というとそうでもなくて。もっとやれることはあるし、そこは今後の課題ですね。

luvis - period(Live Session)

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