ENHYPENはK-POPの枠に収まりきらない存在になった――『コーチェラ』での40分間、本気の勝負を観て

ENHYPENが4月20日(現地時間4月19日)、アメリカ最大級の野外音楽フェスティバル『Coachella Valley Music and Arts Festival 2025』(以下、『コーチェラ』)に出演した。その前週に引き続いて2回目の登場となる今回は、リラックスして臨めたのか、メンバーたちの表情も柔和に。フロアの反応を時折確かめながら歌とダンスを楽しむ様子を観て、すっかりファンになった人も多かっただろう。

直前のDJプレイで観客の興奮が冷めやらぬなか、注目のステージがスタート。効果音とともに「FUEL THE FEVER」の文字が巨大スクリーンに映し出され、大勢のダンサーの合間からENHYPENが現れると会場のボルテージはいきなり最高潮に達した。記念すべきオープニングナンバーは「Blockbuster」。ギターのハードなリフに導かれるように歌い出したENHYPENに、観客がぐいぐいと魅了されていくのが画面越しでも十分にわかる。
続く「Blessed-Cursed」では、ワイルドなパフォーマンスを披露。そして〈너와 나, 너와 나는 우리가 된거야〉(君と僕は、君と僕は僕たちになったんだ)と歌いながら一体感を高める「Future Perfect (Pass the MIC)」、「パーティーをやろう!」と呼びかけて始めた「ParadoXXX Invasion」といったライブ向きのナンバーでさらに盛り上げる様子を見ると、彼らがデビューからずっとK-POPシーンの最前線に立っているのも納得がいく。

間髪を入れずにドラムが鳴り響き、「Paranormal」のフレーズに切り替わった途端にステージはお祭り状態に突入。同曲のオリジナルバージョンのアレンジはドラムンベースが印象的だったが、今回はヘヴィメタル調の生演奏で迫力が増している。それはのちの楽曲でも同様だった。簡単な挨拶を終えてから華麗なパフォーマンスを見せた「XO (Only If You Say Yes) (English Ver.)」や「No Doubt」、「Sweet Venom (English Ver.)」などのR&B系ナンバーもリズムが強化され、満杯の会場を揺らすほどのダイナミズムが感じられた。

もうひとつ興味深かったのは、「Daydream」におけるシンプルなバッキングに妖しく絡むウィスパーボイス、「Moonstruck」での魂を揺さぶるボーカル&ハーモニーといった、ダンス以外の魅力でも熱い反応を得ていた点である。ENHYPENがエンターテインメント性に富んだ集団であるのはファンであれば誰もが知っているが、このような大きな舞台でいわゆる一般のオーディエンスに向けてアピールできたのは、今後のステップアップにつながるに違いない。

見どころ満載のライブもいよいよ終盤。大ヒットナンバー「Bite Me」と「Drunk-Dazed」で再び場内をヒートアップさせた彼らは、締めくくりにファンキーな「Brought The Heat Back」で軽やかに舞い踊る。完全燃焼したメンバーたちは感謝の言葉を述べたあと、満足そうな笑顔で去って行った。そして「CAN’T TOUCH YOU, BUT I’M GONNA MAKE YOU MINE」(君に触れることはできないが、僕は君を自分のものにする)の文字とカムバックの情報が巨大な画面に映し出され、きらびやかなショーはついに幕を閉じた。
ステージに立った時間は40分ほど。普段は2時間以上の公演時間で独自の世界観を強烈に見せてきたグループであるにもかかわらず、コーチェラでは短時間で歌と踊りに集中していたのが新鮮だった。この7人のパフォーマンスだけで十分に勝負できる――。おそらくそんなことを今回は伝えたかったのかもしれない。ENHYPENはデビューから5年目にして、早くもK-POPの枠に収まりきらない存在になったようだ。
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