小田和正は“憧れの存在”であり続ける GLAY、SUPER BEAVER、スキマスイッチらとの交流から見える誠実な姿
GLAYのデビュー30周年記念ベストアルバムにおいて、小田和正とのコラボレーション新曲「悲願」が収録。4月23日にMVも公開された。
小田は、GLAYメンバーとの過去の交流をふまえた上で「あまりに熱心にコラボができないかって言ってもらったので、今回手伝わせて頂きました」(※1)とコメントしており、彼らの熱意に応える形での共演となったことが窺える。さらに発表時に公開された「悲願」のMVには小田自身も出演しており、GLAYとの共演が音源だけにとどまらない形で実現した点もファンの間で大きな話題となっている。
このコラボを起点に振り返ると、“小田和正”という存在がいかに多くのミュージシャンにとって“特別な憧れ”であるかがあらためて浮き彫りになる。SUPER BEAVERのボーカル・渋谷龍太もその1人だ。渋谷は自身のSNSで「小学校4年生から現在に至るまで、俺の一番長いヒーロー」と綴っている。初めて買ったCDが小田が在籍していたオフコースの作品だったという渋谷は、2021年に『MUSIC BLOOD』(日本テレビ系)で「言葉にできない」をカバーする機会を得たのち、同年開催の音楽フェス『NUMBER SHOT 2021』でも披露。同じ日に出演していた小田本人から「解釈を褒めていただけた」と振り返っている。そして小田自身がステージで「SUPER BEAVER、彼らに感謝を込めて」と伝えたうえで「言葉にできない」を歌ってくれたことを「痺れたじゃ済まねぇ」と語ったように、自分の原点とも言える存在からの称賛は渋谷にとって生涯忘れがたい出来事となっただろう。
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また、いきものがかり・水野良樹も、小田へのリスペクトを形にしてきたアーティストである。彼が主宰するプロジェクト・HIROBAでは、2019年に小田とのコラボ曲「YOU (with 小田和正)」を発表している。このプロジェクト自体が、小田がホストを務める音楽特番『クリスマスの約束』(TBS系)に触発されたものであり、水野にとっては強い憧れの対象との共演だった。半年にわたる対話と制作を経て完成したこのバラードは、世代を超えた誠実なコミュニケーションの結実であると同時に、水野の音楽人生においても重要なターニングポイントとなった。興味深いのは、小田が水野に「水野が自立して、ひとりで歌うことも重要じゃないか」と逆提案をし、それが別曲「I」の誕生へと繋がっていったという点である(※2)。年長者でありながら若手の表現を促し、それを支える小田の姿勢には、音楽家としての深い包容力がにじむ。
さらに、スキマスイッチによる「君のとなり」もまた、小田との交流から生まれた1曲である。もともとこの曲は、2006年放送の『クリスマスの約束』で小田とスキマスイッチが一夜限りの共作ののちに披露した「僕らなら」という曲が原型となっている。その後、スキマスイッチがコラボアルバム『re:Action』を制作する際、小田に参加を打診したところ、逆に小田から「当時の曲を甦らせよう」と提案があり、正式な形で再構築されたのが「君のとなり」であった。楽曲はタイトルと歌詞を新たに書き下ろした上で完成した。松たか子もゲストコーラスとして加わり、世代を超えたアンサンブルが実現した。10年以上の時を経て“あのクリスマスの一夜”が形となった本作は、番組での共演を起点とする信頼関係があったからこそ可能となった特別な1曲と言えるだろう。