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サカナクションは、80年代カルチャーをどう消化した? 「モス」に潜む“コミカルさ”と“シリアスさ”

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 サカナクションの「モス」は、このバンド流のミクスチャー感覚が表れた、優れた楽曲である。

サカナクション『忘れられないの/モス』

 「モス」について山口一郎は、TOKYO FMのレギュラー番組でこう語っている。

「この曲は、サカナクションの中でも“浅瀬”というかね。一番外側に向けて発信する曲として作り始めたんですけど、コンセプトとしては、C-C-Bと、Talking HeadsとUKインディ……Klaxonsとか、Bloc Partyですね。僕らの時代の青春ですよ。そういうバンドをグっと混ぜ合わせたら、どういうモノになるかと実験的に作っていった曲だったんですね。でも最初は、C-C-BとTalking Headsと山本リンダだったの(笑)。でも、頭の『ジャジャ、ジャジャ♪』というところは、結構な山本リンダ(「狙いうち」)感が出ちゃった(笑)」

TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK! UNIVERSITY サカナLOCKS!』6月14日放送分

 この言葉から「モス」について考察してみよう。

サカナクション / モス

 まず途中から表れたという「山本リンダ感」は、イントロ部分でダイナミックにくり返されるフレーズを指している。サカナクションにはポップなリフレインを持つ曲が多いが、この曲のそれはひときわ大胆で、インパクトが強い。そして山本の代表的なヒットソング「狙いうち」は、〈ウララ ウララ ウラウラで〉と続く歌メロが強烈な曲として知られており、そこまでを導くイントロ部分も破壊力が強い。1973年のリリース曲だ。

 続いて、もともとのベースにあったというC-C-Bは、80年代に日本のヒットチャートをにぎわせたポップバンド。「彼らといえばこれ」的な「Romanticが止まらない」(1985年)との共通項を探ると、これも「モス」のイントロか。それに加え、ファルセットが混じる合いの手のようなコーラス(〈ソウゾウデキズニ〉〈ソウイウフンイキ〉等の箇所)にも通じるものを感じる。

 それからTalking Headsは70年代にニューヨークで結成され、90年代まで活躍したアートスクール出身の知性派バンド。アフロビートを解釈した傑作『Remain In Light』収録の「Once In A Lifetime」(1980年)あたりの、躍動するリズムに乗って執拗にくり返されるフレーズは、直接的ではないにせよ、「モス」の持っている要素と遠くはない。

Talking Heads – Once in a Lifetime (Official Video)

 さらに山口はKlaxonsとBloc Partyの名も挙げている。いずれも2000年代の半ばから後半にかけて目覚ましい活躍をしたUKバンド。2組とも性急なビート感や鋭いギターサウンドを特徴に持っている。

Klaxons – Gravitys Rainbow (Official Video)
Bloc Party – Helicopter

 と、ここまでは山口の種明かし的な話を元にしたが……80年代に青春を送った僕からすると、「モス」のあのフレーズはQUEENの「Back Chat」(1982年)を彷彿させる(ついでに書くと、それに寄せたと思われる田原俊彦「シャワーな気分」(1983年)も)。

Queen – Back Chat (Official Video)

 また「モス」は、2コーラス目以降に主メロ部分にサイケデリックな浮遊感やクラップ音が響く場面も訪れる。こうした広がりを持つ、スケールの大きな楽曲なのだ。ここには、山口とサカナクションなりのハイブリッドな感覚が表れている。

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