コレサワがヒットを生む理由「恋愛は世界の共通感情だと考えている」 音楽の開花と存在意義を語る

2024年「元彼女のみなさまへ」がSNSを中心にバズを引き起こしてヒット。「TikTok Buzz Tracker」Monthly Artist 第33弾への選出、『第66回輝く! 日本レコード大賞』の「作詩賞」受賞など、その認知度を一気に広めたコレサワ。彼女が4年ぶり4枚目のフルアルバム『あたしを選んだ君とあたしを選ばなかった君へ』をリリースした。「恋愛は世界共通感情」という名言も出た今回のインタビュー。鋭い観察眼を持ち、時に生々しすぎて苦しくなるほど強い言葉を使いながらも、キャッチーなメロディで“コレサワポップス”を歌う彼女が、曲を生み出すために意識していることとは一体何なのか、話を聞いた。(伊藤亜希)
「私は今、注目されてない」って思いながら、アルバムの曲を書いていました
――まずは、2024年を振り返ってみての感想をお聞かせいただけますか?
コレサワ:今までやってきた種蒔きみたいなものが開花した感覚もありますね。達成感や嬉しい気持ちもありつつ、でもこれからがスタートだっていう気持ちのほうが大きい。2025年はもっと挑戦していかなきゃなって考えてますし、挑戦していく年だなと思ってます。
――「元彼女のみなさまへ」がSNSでのバズをきっかけに大ヒットしましたが、それを実感したのはどんな瞬間でした?
コレサワ:この数年、あまり連絡を取ってなかった友達から「この前ラジオで聴いたよ」とか「テレビ観たよ」とか言葉をもらった時。子育てとかして、今頑張ってお母さんをやっている子たちもいるんですけど、そういう子たちにも曲が届いているんだなって思った時に「流行っているんだな」という実感がありましたね。私が音楽活動していることを今でもちゃんと見ていてくれているんだって、すごく嬉しくなりました。
――今回のアルバム『あたしを選んだ君とあたしを選ばなかった君へ』のリリースは、前から決まってたんですか?
コレサワ:アルバムのリリースは、かなり前から決まっていました。ただ、状況がよくなってきたり、ライブにきてくれるお客さんがどんどん増えていっている過程で、自分のなかで「これはすごく大事なアルバムになるな」とひしひし感じるようになっていて。それでなんかこう……浮かれないようにしようと思ったし。ライブには初めてコレサワを観にくる人も多いだろうから、幻滅させないように、「ライブにきてよかったな」と思ってもらえるように考えていました。私、考えすぎちゃうことも多いんです。だから、この変化をプレッシャーだと思わないように過ごすことを努力しましたね。
――プレッシャーっていうのは、それだけ自分の楽曲に対する責任感が強くなったということですか?
コレサワ:というよりも、「期待に応えたい」っていう気持ちですね。注目されているってことは、新曲を出したら聴いてくれる人が明らかに多くなる。その期待にどれだけ応えて、いい意味で裏切っていくか。そこをやり続けないと、これからを考えた時に続かないと思ったんです。(新曲を出した時に)「また同じ感じか」と思われても嫌だし、だけど変わりすぎるのも違う。それでずっと応援してくれた人が離れていくのもイヤだった。ただ、そこを気にしすぎると私らしさがなくなるのはわかっていたので……。「私は今、注目されてない」って思いながら、アルバムの曲を書いていました。
――自分らしさを失わないための努力ですね。
コレサワ:そうなりますね。世のなかの女の子たちがちょっと言いづらいことや表に出せない気持ちをかわりに歌う存在がコレサワだと思ってるので。スタッフとも「売れたと思わないようにしよう!」っていつも言い合っていて(笑)。平常心というか、フラットなままで曲作りしよう、レコーディングしようと思っていたんですよね。
――そういうなかでできあがったのが、『あたしを選んだ君とあたしを選ばなかった君へ』ですね。
コレサワ:そうですね。今回、いろいろなアレンジャーさんと一緒に作ったんですけど、それがとても楽しかった。自分のなかにはない、音の引き出しをいっぱい持っていらっしゃるじゃないですか。どの曲をどのアレンジャーさんに頼むかも、「これはこの人」「この曲にはこの人」って、かなり自由に作らせてもらったんです。すでにリリースされている曲のなかには、ライブのバンドメンバーと録った曲もあったりして。新旧のコレサワが混ざってるなと思いますし、そこがいいバランスになったなと思ってます。
コレサワにとっての恋愛感情は「英語が世界の共通言語みたいな感じ」


――「元彼女のみなさまへ」で、初めてコレサワさんを知った人のなかには、イメージがあると思うんですよ。
コレサワ:わかります。あると思います。
――そのイメージも出しつつ、もうひとつのコレサワさんの軸であるアコースティックギターの弾き語りというスタイルもしっかり印象付けるアルバムになってますよね。そしてどの曲もキャッチーなのが素晴らしいです。
コレサワ:キャッチーなものを作りたかったんですよね。これはずっと意識していることなんですけど、新しくコレサワを知ってくれる人も楽しめるし、ずっと応援してくれている人も楽しめるようなものにしたかったんです。ただ、みんなが普段はあまり見たことのない視点から、愛について歌ってる曲が多いと思います。ほとんどがラブソングなんですよね。英語が世界の共通言語みたいな感じで、恋愛は世界の共通感情みたいだなと私は考えているんですよ。
――共通感情ってとてもわかりやすいですね。今思ったんですけど、どんな状況でも世界から恋愛はなくならないかも。
コレサワ:うん。ほとんどの人が経験したことあるのが、恋愛でもあって。だから私自身、恋愛をする人間としては、もう本当にみんなと変わらない。それを歌っているわけだから、共感してくれる人が多いのかなと思います。
――個人的には「朝帰り」という曲が大好きで。この曲はどうやって作っていったんですか?
コレサワ:「朝帰り」は、今回のアルバムのいちばん最後にレコーディングしたんです。久しぶりにプライベートで朝帰りすることがあって(笑)。朝5時とか6時とかの街の様子を見て、陰と陽みたいなものを感じたんですよね。ランニングをしている元気な人もいれば、今から仕事行くんだろうなみたいな暗い表情の人もいるし、夜勤明けで疲れている人もいる。でも空気は澄んでいて、街もまだ静かで。久しぶりにちょっとキュンってして、センチメンタルな気持ちになったんです。その時に思いついて頭に流れたものを曲にしました。久しぶりの朝帰りで見た街の風景が、自分にとってはすごく新鮮だったんです。そこが刺激になって、感情が出てきて曲になっていきました。たとえばミュージカルって、突然音楽が入ったり歌い出したりするじゃないですか。そういう感じが日常的にあるんですよね。外出してる時のほうがそれは圧倒的に多いんですけど。メロディと歌詞が一緒に出てくるので、ボイスメモを録って、家に帰って作る気分になったらフル尺を作る、というパターンが多いですね。
――そういった曲を作りたくなる気分を大切にしてる?
コレサワ:そうですね。プールしておくというよりも、歌いたくなったら歌う。そこから曲を作るっていうスタンスを大切にしてますね。机に向かってカリカリとかはなるべくしないようにしてます。
――日常のキュンとするタイミングが曲作りに繋がる、と。
コレサワ:そうです、そうです。
――キュンとする感情って、ポジティブな感情ですよね。
コレサワ:そうなんです。私は楽しい時に曲を作ったり、作業したりすることが多いので、自分の機嫌を常によく保つことを心がけてます。
――どんなふうに心がけてるんですか?
コレサワ:ストレスになることをしない、ストレスを溜めない。そのために友だちと遊ぶとか、買い物するとか、わくわくすることを計画するんです。そうなるようにスケジュールを組んでいく。