サカナクションは、80年代カルチャーをどう消化した? 「モス」に潜む“コミカルさ”と“シリアスさ”
サカナクションの「モス」は、このバンド流のミクスチャー感覚が表れた、優れた楽曲である。 「モス」について山口一郎…
ニューヨークが誇る最強のインテリジェンス・ニューウェイヴ・バンド、トーキング・ヘッズ。マスなリスナーよりも、評論家やミュージシャンといった“その筋の人たち”から熱烈な支持を獲得していることでも知られる。
1stアルバム『サイコ・キラー'77』(77年)の時点で既に評価の高かった彼らだが、その名を全世界に知らしめたのは2nd『モア・ソングス』(78年)であろう。ヘッズの頭脳デヴィッド・バーン(vo)とプロデューサーのブライアン・イーノの邂逅によって生みだされる、最高にクール&ポップなサウンド世界。それは、すべての音楽リスナーが初めて耳にする音だったのではないか。そして『フィア・オブ・ミュージック』(79年)の商業的成功を挟んで、ヘッズ&イーノの最高傑作として名高い『リメイン・イン・ライト』(80年)をドロップ。ソウル/ファンクのもつアッパーなアフリカン・テイストを、ニューウェイヴ特有の知性的かつ無機質な文脈のなか巧妙に開花してみせた、80年代を代表する画期的な名盤であった。また、エイドリアン・ブリューやバニー・ウォーレルといった一流のスタジオ・ミュージシャンをレコーディング全般に渡って起用し、各メンバーが担当楽器を操るというロック・バンドの概念すら覆したのだ。
こうして名実共にトップ・バンドとなったトーキング・ヘッズは、ドキュメンタリー映画『ストップ・メイキング・センス』(84年劇場公開)を制作。デヴィッド・バーンの奇才ぶりが遺憾なく発揮された、このカルト・ムーヴィーは、初のバーン監督作『トゥルー・ストーリーズ』(86年)と共に、今なお映像マニアの間で高い人気を誇るという。そして、ロック・バンドとしてのアイデンティティを再確認したかのような原点回帰的意味合いの強い『リトル・クリーチャーズ』(85年)を生み出し、往年のファンを喜ばせた。その後、メンバー4人の力が結集された意欲作『ネイキッド』(89年)をリリースしたものの、トーキング・ヘッズ名義の活動は休止状態に入っていく。
サカナクションの「モス」は、このバンド流のミクスチャー感覚が表れた、優れた楽曲である。 「モス」について山口一郎…