藤巻亮太が『儚く脆いもの』で描く、変わりゆくからこその美しさ さらに自由に「自分を開放していきたい」

藤巻亮太が描く“変化”の美しさ

 藤巻亮太から、通算5作目のソロアルバム『儚く脆いもの』が届けられた。

 前作『Sunshine』以降に配信リリースされた「真っ白な街」、「朝焼けの向こう」、さらに華やかなポップチューン「桜の花が咲く頃」、「この曲をきっかけに、アルバムとしてまとめようという気持ちになれた」という「新しい季節」など計10曲を収録。日常に根ざしたソングライティング、生々しいバンドサウンドが響き合う充実作に仕上がっている。

 毎年3月9日に行われている『THANK YOU LIVE 2025』(今年は地元・山梨県YCC県民文化大ホールで開催)に続き、4月にはアルバムを携えた全国ツアーを開催。さらに今年も野外音楽フェス『Mt.FUJIMAKI 2025』(9月27日/山梨県・山中湖交流プラザきらら)も控えている。ソロ活動スタートから13年目を迎えた藤巻に、新作『儚く脆いもの』の制作、ライブについて語ってもらった。(森朋之)

肩の力を抜いた曲作りへのチャレンジ

藤巻亮太『儚く脆いもの』Trailer

——アルバム『儚く脆いもの』がリリースされました。5作目のソロアルバムですね。

藤巻亮太(以下、藤巻):もう5枚目なんですね。これだけ出させてもらえてるんだな、とありがたく思っています。

——前作『Sunshine』以降、アルバムのリリースツアーや『Mt.FUJIMAKI』があって。ライブを中心にした活動が続いていた印象もあります。

藤巻:そうですね。『Mt.FUJIMAKI』もそうだし、毎年3月9日にやっている『THANK YOU LIVE』も軸になっていて。弾き語りで歌わせてもらう機会も多いし、たしかにいろんなところで歌ってましたね。

——曲作りについてはいかがですか?

藤巻:時系列をよく覚えてないんですけど(笑)、去年の『THANK YOU LIVE』が終わったあとに「新曲を作ろう」というモードになった気がします。「朝焼けの向こう」は『Sunshine』の流れで作ったところもあるんですけど、そのあとは結構(曲作りのペースが)開いてたんですよ。きっかけになったのは「新しい季節」ができたことですね。すごくポジティブで直球な曲なんですけど、この曲を書いたことで自分のマインド的にも「ここから行くっしょ!」みたいになれて、そこから曲作りのスイッチが入ったというか。

——それまでは自分の次のモードを探っていた?

藤巻:そうかもしれないですね。自然にアウトプットできる自分に変わるまでは無理しなくていいのかなと。ひとつひとつのライブに集中しながら、日々、いろんなことを感じている部分もあるので、意識してインプットしていたわけでもないんですよ。山に登ったり、今はそういうことはしてないです(笑)。

——以前はネパールの山に登ったりしてましたからね。カメラは?

藤巻:写真はずっと撮ってますね。今回のアルバムのジャケットやブックレットも、全部自分で撮った写真なので。それも「次のアルバムのために」ということではなくて、旅行先で撮ったりした写真の中から合いそうなものを選びました。

藤巻亮太(撮影=林直幸)

——アルバム自体も、藤巻さんの日常が感じられる曲が多いなと感じました。

藤巻:最終的には自分のフィルターを通って出てきたものだと思うんですけど、自分の思いをしっかり通そうと意識すると、どうしても肩の力が入っちゃうんですよね。もう少しラフな感じというか、たとえばフィクションを設定して、自分がその物語に入っていくような書き方もいいのかなと。フィクションの型みたいなものを作って、それを利用して歌詞を書いていくと、必然的にその中には自分自身が出てくる。最後に型を取っても、ちゃんと自分が残る……そういう曲が増えたのかなと思ってますね。

——曲の書き方の幅が広がった?

藤巻:そうですね。ソロとしての立ち位置だとか、“何を歌うべきか”みたいなことを意識すると、どうしても歌詞の世界が狭くなるんですよ。そこから遠ざかりたくて、もっと気軽に歌詞を書けたらいいなと思っていました。

——「ソロとして、何をやるべきか」というテーマはしっかり追求してきましたからね。

藤巻:最初の『オオカミ青年』がそういうアルバムでしたからね。レミオロメンというチームとして歌ってきた世界観と、自分が個人的に吐露したい感情が明確に分かれていて、「とにかく自分のことだけを歌うんだ」というところから始まって。そうやって吐き出した先に、「バンドとして歩んできた道とソロは、どこが違うんだろう?」と悩んだり、全部が地続きなんだと思える時期もありました。

季節の情景と時間の流れが織りなす音楽世界

——今回のアルバムも、そういう軌跡の先にある作品だと思います。1曲目の「桜の花が咲く頃」は、まさにこの季節にぴったりのポップチューン。〈目黒川は混んでます/相変わらず人気ですね/外国の人たちも/楽しそうに写真を撮ってます〉という描写的なフレーズが印象的でした。たしかにあの近辺、桜の時期は混んでますからね。

藤巻:土日は特に混んでるし、インバウンドの方々がすごいですからね。この曲はかなりカジュアルというか、日常の目線で書いた曲ではあるんですけど、もともとは「藤巻亮太としてのポップスを作ってみたい」と思って取り組んでいたんですよ。メロディラインもそうだし、カラフルな音色なども含めて、自分にとってのポップを意識して作っている中で桜というモチーフが出てきて。その景色の中に自分自身の思い出や実感みたいなものが出てきたという感じですね。

藤巻亮太/「桜の花が咲く頃」(Official Audio)

——なるほど。「Glory Days」は、かつての恋人を思い出しているような内容ですね。

藤巻:いろんな痛みや後悔、寂しさ、悲しさもそうですけど、いろんな気持ちを伴うものだと思うんですよ、別れって。でも、時間の経過とともに変わっていく部分もあって。もしかしたら相手もそうかもしれないけど、別れてしまった相手にもう一度共感したり、自分自身が救われることもあるんじゃないかなって。“時間薬”というのかな。自分の人生の一部として、その人と出会えたことのありがたさと素晴らしさ、感謝を描いてみたいなと。

——今の年齢だから書けた曲かもしれないですね。

藤巻:そうかもしれない。これは『儚く脆いもの』というアルバムのタイトルにもかかわってくるんですけど、一期一会の出会いがあっても、世の中も自分も変わっていくし、もちろん相手も変わっていく。当たり前に“ずっと続いていく”と思っていても、実は儚くて脆いものなんだなと。だからこそ、変わりゆく世界の中で出会えた奇跡だったり、一緒に時間を共有できることの素晴らしさが浮かび上がってくるんだと思うんです。そういう実感が自分にもあるし、これまでの人生を振り返る中で出会ってきた相手への感謝をあらためて感じたり……。そういう曲が多かった気がしますね。

——先ほど“フィクションの型”という話がありましたけど、フィクションの設定だからこそ描けることもあるのでは?

藤巻:フィクションの力を使ったほうが豊かなリアリティに繋がることはあると思います。歌詞を書く上で、今はそっちのほうが面白いんですよね。

藤巻亮太(撮影=林直幸)

——「愛の風」からも、強いリアリティを感じました。“若いときは夢を追っていたけど、今は違う仕事で暮らしている”というニュアンスの歌詞もありますが、これは具体的なエピソードに基づいているんですか?

藤巻:誰かと話してたときの何気ない一言だったり、その時の風景だったり。具体的な何かというよりも、そういうものが「愛の風」を書かせたんじゃないかな。自分はミュージシャンとしてやってますけど、“もしかしたら”ということもあるし。

——別の人生があった可能性も……?

藤巻:うーん、あんまりないかな(笑)。だけどバンドからソロになったのもそうかもしれないし、人生ってわかんないなって。時々地元の同級生と会って話したりもするんだけど、今を一生懸命に生きてる姿っていいなと思ったり、「僕も頑張ろう」って刺激を受けたり。誰しも、「自分の頑張りって、誰も見てないかもしれないな」という孤独ってあると思うんですよ。そんな時に「ちゃんと見てるよ」と言ってもらえたら嬉しいし、安心して頑張れる気がして。そういう曲になったらいいなと思いますね。

——これまでの人生を振り返りつつ、今の自分、この先の自分をイメージするというか。このアルバムにはそういう雰囲気もありますね。

藤巻:ディレクターの方と話している中で、「藤巻さんの中にある情けなさだったり、フタをしてきた感情もあるんじゃないですか?」みたいな向き合い方をしてくれて。そこから曲作りが変わってきた感じもあるんですよね。「自分が今、歌いたいことは?」を突き詰めると、どうしても肩に力が入ってしまう。そうじゃないところで作りたいという気持ちもあったと思います。

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