生田絵梨花、苦い感情がカラフルなポップソングへ 等身大であり続けることから生まれる新しい曲作り

生田絵梨花、“等身大”から生まれる曲作り

 生田絵梨花が2nd EP『bitter candy』をリリースした。デビュー作となった1st EP『capriccioso』から約1年。『bitter candy』にはすでにライブで披露され、観客と心を通わせてきた曲も多数収録されている。素直な感情をジャジーなテイストで彩り、極上のアンセムに仕立て上げた2つのリード曲「上出来」「無視」を筆頭に、sumika 片岡健太による提供曲「アンサンブル・シャングリラ」、meiyoによる提供曲「Clap & Clap!」、椎名林檎が作詞作曲した「カプチーノ」(ともさかりえ)のカバーなど、バラエティに富んだ楽曲が並ぶEPとなった。本作の制作を振り返りながら、音楽を通して自分自身やファンとの繋がりを表現していく生田絵梨花のパーソナリティに迫る。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

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「ネガティブなことをどうしたら面白がれるのか考えるタイプ」

――2nd EP『bitter candy』のタイトルに込めた思いを詳しく聞かせてください。

生田絵梨花(以下、生田):収録楽曲が全て揃ってからタイトルを何にしようか考えていったんですけど、全体的にはポップに聴こえる曲、可愛らしく聴こえる曲が集まったと思っています。でも、自分の作った楽曲も含め、苦い感情や経験から生まれている曲も多いと思った時に、その苦いとか甘いという相反する言葉が一体になった『bitter candy』がしっくりハマると思ったんです。

――酸いも甘いも噛み分けるという言葉がありますけど、全てを人生の経験に変えていくというような。

生田:そうですね。自分もそういったネガティブなことが起こったりした時に、そのまま暗くなってしまうのではなく、どうしたらよりポップに感じたり、面白がれるのかを考えるタイプなので、そういったことも含めて『bitter candy』がいいのかなと思いました。

――収録楽曲のリリース順的には、NHK『みんなのうた』の「かくれんぼ」が最初になります。

生田:『みんなのうた』は親子でも聴いているイメージなんですけど、作詞・作曲の矢吹(香那)さんに小さいお子さんがいらっしゃって、その子がかくれんぼが好きというところからできた楽曲なんです。いろんな世代に響いてほしいと思ったので、親子のかくれんぼとも取れるし、恋人とか自分のペットとか、そういった存在にも重ねながら聴いてもらえたらいいなと思って。伝えたいんだけど、伝えられなくて隠れちゃう感じをイメージしていました。

――誰かに見つけてもらいたい気持ちを、かくれんぼに重ねているところが斬新だなと思いました。

生田:改めて「かくれんぼ とは」ってネットで調べたんですよ。親から隠れたいわけじゃなくて、どんな状況でも自分のことを見つけてもらえる安心感を求めて隠れるんだっていうことを知って。もちろん子供はそこまで考えてはいないですけど、それを見た時になるほどと思って、そこからいろんな発想が浮かんでいきました。

――「プリンが救世主になった」と『Venue101』(NHK総合)で話していましたよね。

生田:そうなんです。歌詞が締め切り間際でなかなか出てこなくて。プリンを食べたら一気に童心に帰ることができて、その日にはもう歌詞を出すことができました。

生田絵梨花「かくれんぼ」MV

――時系列的には次は「モンブラン」になりますが、温かなクリスマスソングだと思います。

生田:でもちょっと儚い感じがあって。デモの段階ではすべて英語の仮歌だったんです。いい曲だな、歌いたいなと思っていて、そこから今の歌詞がきた時に「モンブラン」っていうタイトルなのが意外でした。でもちょっとキャッチーさもあり、王道のショートケーキになりきれない主人公の境遇がモンブランに重なる、クリスマスソングだけど切なさがあっていいなと思います。

――ファンのみなさんからの反響はいかがですか?

生田:「クリスマスにショートケーキじゃなくてモンブランを食べたよ」だとか、「この曲を聴いて告白しようと思いました」というメッセージがラジオ(『Volkswagen DRIVING WITH YOU』/J-WAVE)に届いたりして、こうやって冬になると思い出す、聴きたくなる曲ができたのは嬉しいです。

生田絵梨花 「モンブラン」Lyric Video

「殻を破りたい」思いから取り入れたジャズのエッセンス

――「上出来」と「無視」が今回のリード曲になっていますが、前作『capriccioso』でもリード曲の「Laundry」がグルーヴ感のあるジャジーなナンバーで、今回の「上出来」と「無視」にもジャズの雰囲気を感じました。生田さんの中でジャズがルーツにあるのかなとも思えてきます。

生田:私は歌を口ずさみながらピアノで伴奏をつけることで作曲をしていくんです。結果的にジャズの要素が入ってくるのは、自分でも驚きます。「上出来」も最初に構想していた時はどちらかというとライブで明るく歌うようなイメージだったんですけど、伴奏をつけてみたら陰りの見えるちょっと怪しげな雰囲気が出てきて。自分はクラシックからピアノを習って、乃木坂46でも基本はバラードを弾いてきたので、一人で新たに音楽をやるという時に、どこかではみ出したい、殻を破りたいという思いから、結果的にジャズの要素がある曲になっているのかなと思います。私は独学で作曲の勉強をしていたんですけど、単純に知ってるコードが少ないと全部同じような感じになっちゃうんですよ。違う曲調で作りたいと思った時に、ジャズのコードが入ってくるとまた新鮮な響きになるのが面白くて、そういった勉強の仕方もあるのかもしれないですね。

生田絵梨花「上出来」MV

――「上出来」はイントロのブラスの音色とウッドベースが特徴的ですよね。

生田:アレンジャーの幕須(介人)さんによって、この曲は化けましたね。ピアノで伴奏をつけたデモにいろんな楽器が入っていたので、こんな華やかになるんだってびっくりしました。

――サビの〈上出来 上出来〉のフレーズも聴いていて気持ちいいです。

生田:これはEP全体に言えることなんですけど、『capriccioso』のツアー(『Erika Ikuta Tour 2024「capriccioso」』)を通して、ライブで盛り上げようとする時にカバー曲の力を借りていたので、そういった盛り上がる曲を増やしたいと感じたんですよ。今回のEPに収録するにあたって、sumikaの片岡(健太)さんにも、meiyoさんにもライブで盛り上がる曲がいいとお話ししましたし、「上出来」も始めから一緒に掛け声を合わせられるところがあるといいなと思って、何の言葉がいいか模索した中で出てきたのが〈上出来〉だったんです。

――言葉の語呂もいいですし、自分を肯定する、鼓舞する言葉というところでもベストチョイスな気がします。

生田:そうですね。語感もハマりましたし、自分がどこかで求めている言葉でもあったから、この言葉が見つかってからは一気に書けました。

――「無視」はどうですか。

生田:この曲は私が何かと怒っていた時期で、あらゆる局面で怒りを感じた時に無視してしまう、そのことがどうしようもないなと思っていたんです。どうしようもないままにするのではなくて、せめて何か意味のあるものにしたいなと思って、なかなかタイトルになるようなワードではない「無視」をあえて題材にして曲を作ろうと思って。気持ちが晴れない状態からスカッとできる曲にしたいと思って、曲調もリズミカルにしてみたり、歌詞もポップに見えるんだけどちょっと強がってるようなワードをチョイスしてみたりして、聴いてくれる人が面白がってくれたらいいなと思って作りました。

生田絵梨花 「無視」MV

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