窪田正孝が考える“人間にとって一番価値のあるもの”とは? 「少しでも楽しめるものに」
窪田正孝が主演を務めるNHKドラマ10『宙(そら)わたる教室』が10月8日より放送される。本作は、大阪府のとある定時制高校の科学部が、科学研究の発表会「日本地球惑星科学連合大会・高校生の部」で優秀賞を受賞し、「はやぶさ2」の基礎実験にも参加したという実話に着想を得た伊与原新の同名小説をドラマ化した青春ストーリー。
さまざまな事情を抱えた生徒たちを導く理科教師・藤竹叶を、2020年度前期の連続テレビ小説『エール』以来、4年ぶりのNHK連ドラ主演となる窪田が演じる。放送を前に、「リアルな青春」と語る個性豊かな共演者との撮影の様子について聞いた。
「実験のようにトライ&エラーの毎日」
ーーNHKのドラマで主演を務めるのは実に4年ぶりですが、久しぶりにスタジオを訪れた感想はいかがですか?
窪田正孝(以下、窪田):実はさっき、朝ドラと大河ドラマのスタジオに遊びに行ってきたんですが、僕が出演したときと全然変わってなくて懐かしい気持ちになりました。
ーーNHKは朝ドラと大河ドラマ以外でもドラマ制作に力を入れていて、『宙わたる教室』が放送されるドラマ10枠も秀作続きですが、窪田さんはどんな印象を持っていますか?
窪田:過去作を観ても、本当に多様な題材を扱っているドラマ枠だなと思います。今回もまた攻めているといいますか、あまり他局が扱わないジャンルに飛び込んで、新しい扉をこじ開けている印象を受けました。
ーー大元の実話が感動的なのはもちろん、原作小説も大変優れた作品ですが、窪田さんは今回ドラマ化する意義についてはどのようにお考えなのでしょうか?
窪田:宇宙にはたくさんの物質があって、そのうち僕たち人間が知っているのは5%にも満たないという話を聞いたことがあります。それくらい宇宙には未解明なものがまだまだあって謎に満ちている。このドラマで描かれる科学部は火星のクレーター再現実験に挑みますけど、いつか映画『オデッセイ』の主人公みたいに人類が火星に行ける日が来るかもしれない。そんなふうに人間の視野がどんどん広がっているのも、スマホがあって地球の裏側にいる人ともタイムリーに繋がれているのも、全ては科学技術が発展しているからですよね。僕がそうだったように、本作がその面白さを知る一つのきっかけになってくれたらいいなと思います。
ーー定時制高校が舞台になっている観点からはいかがでしょうか?
窪田:定時制高校が舞台なので、本当に生徒の年齢はバラバラなんですけど、みんな悩みがあって、みんなそれぞれ苦しんでいるんですよね。そういう心の内にあるものってつい他人には隠しちゃうし、最近は本音を言えない世の中になっちゃってますけど、この定時制高校という舞台ではそれを共有できる瞬間が多々あって、みんな同じように苦しんでいるし、その苦しみを抜けた先に得るものがあるということを教えてくれるドラマになっていると思います。
ーー窪田さんが演じる藤竹は、惑星科学の優秀な研究者にもかかわらず、突如、定時制高校の教師になった謎めいたキャラクターです。演じるにあたって原作から膨らませた部分はありますか?
窪田:原作には原作の良さ、ドラマにはドラマの良さがあると思っているので、あまり原作を意識せず、台本から受けたインスピレーションで演じさせてもらっています。共演者の方々からも刺激を受けていて、みんなとわちゃわちゃしながら、それこそ実験のようにトライ&エラーの毎日ですけど、すごくやりがいがありますね。
ーーその中で主演として意識していることはありますか?
窪田:そもそも今回は自分が主役だと思っていないんです。主役はあくまでも科学部のみんなであって、彼らが実験を通じてどんな化学反応を起こすのかが本作の見どころ。そのためのレールを敷くことと、視聴者の方に科学の面白さをわかりやすく伝えることが僕の役目だと思っています。一方で、教員役の田中哲司さんや木村文乃さんといるときは教師という職業を共有する仲間という感じがします。だから主演として意識していることは特にないですけど、科学部のみんなといるときは知らぬ間に教える立場だということを意識してるのかなって。それは自分としても新しい発見でしたね。