『アンナチュラル』『MIU404』はなぜ特別なドラマなのか 野木亜紀子の“予言”の作品に

『アンナチュラル』『MIU404』はなぜ特別?

 映画『ラストマイル』が大ヒットしていることで、塚原あゆ子(監督)、野木亜紀子(脚本)、新井順子(プロデュース)の3人が制作した同じ世界観を共有している『アンナチュラル』(TBS系)と『MIU404』(TBS系)の2作のテレビドラマに、再び注目が集まっている。

『アンナチュラル』©TBS

 2018年に放送された『アンナチュラル』は不自然死(アンナチュラル・デス)のご遺体を解剖して死因を解明するUDIラボ(不自然死究明研究所)が舞台のドラマだ。

 本作の魅力は大きく分けて二つ。一つはご遺体の解剖をきっかけに展開される1話完結のサスペンスストーリー。毎話、描かれる「不自然死」の背後には現代日本に蔓延する社会問題があり、性差別、超過労働、いじめといった社会問題が盛り込まれている。本作は野木亜紀子が脚本を執筆したオリジナル作品として、1話完結の事件モノという枠組みの中に社会性のあるテーマを盛り込むことで、見応えある作品を生み出すことに成功している。

 今観ても驚くのは、やはり第1話「名前のない毒」だ。ご遺体の死因が海外で感染したMERSコロナウイルスだったこときっかけで、日本でパンデミック騒動が起こり被害者遺族に誹謗中傷が集まる展開は、2020年に起きた新型コロナウイルスの世界的流行を彷彿とさせるものとなっていた。そのため、予言的と言われることの多いエピソードだ。

 野木自身は『婦人画報 2022年2月号』(ハースト婦人画報社)に掲載されたインタビューで、「MERSコロナウイルスは終息宣言が出ておらず、いつまたパンデミックが起こるともわからないなかで書いたので、予言でもなんでもなく、実際にある問題を描いたにすぎないんですよ」と語っているが、社会問題に対する意識を持った脚本家が精密な取材を積み重ねて脚本を書けば、近い未来に起こり得る可能性のある事件を現実に先駆けて描くことが可能だと、本作は証明したように思う。

 実際、他のエピソードを見ても、いつ同じような事件が起きてもおかしくないと感じる。放送当時よりも過重労働や性差別に対する問題意識は高まっているが、根底にある社会の構造は変わっておらず、むしろ事態は悪化していると感じることも少なくない。

 もう一つの魅力は、UDIラボ内での楽しいやりとり。法医解剖医の三澄ミコト(石原さとみ)と中堂系(井浦新)、新人記録員の久部六郎(窪田正孝)。臨床検査技師の東海林夕子(市川実日子)、そして所長の神倉保夫(松重豊)。彼らのチームワークが深まっていく姿が見られるのは連ドラならではの魅力だろう。物語全体の幹となっているのは中堂系の過去にまつわるエピソードで、1話だけ観ても全話観ても面白い。

 『アンナチュラル』の魅力は、2020年のドラマ『MIU404』にも引き継がれている。本作は事件の初動捜査を担当する4機捜(第4機動捜査隊)の志摩一未(星野源)と伊吹藍(綾野剛)が主人公のバディものの刑事ドラマ。

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