『ブギウギ』愉快な「買物ブギー」はいかにして誕生した? 史実から紐解く“遊び心”

『ブギウギ』「買物ブギー」の“遊び心”

 大野(木野花)がやってきて、スズ子(趣里)の家が一気に賑やかになったNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。人が増えたのももちろんだが、飛び交う言葉が独特だ。りつ子(菊地凛子)は青森出身でも、普段話す言葉は東京のことばに合わせているようだが、スズ子が話すのは、いつでもどこでも大阪ことば。なまりの強い青森ことばの大野とコテコテ大阪ことばのスズ子のやりとりが、東京の家でされている。小さな家に、いろいろな背景をもった人たちが様々な事情で、いたるところから集っていた「東京」の様子が詰まっているように見えた。

左から、福来スズ子(趣里)、羽鳥善一(草彅剛)。 羽鳥家・仕事場にて。レッスンを止めようとするカツオを引き留める善一。

 スズ子のモデルとなった笠置シヅ子も東京生活が長くなってもずっと大阪弁を貫いていた。それが曲にまで活かされていたのが、1950年にリリースされた「買物ブギー」である。

 作曲は服部良一、作詞は服部が別名義の「村雨まさを」の名を使って手がけたこの曲は、上方落語の演目のひとつである、「無い物買い」を参考にしているそう。落語では、男2人が金物屋や古手屋(今でいう中古品店)、和菓子屋などを巡りながら、「歯がギザギザになっていないノコギリ」「三角形の座布団」「竹の皮で包めないほどの大きなぼた餅」などその店にありそうでないものを買い求め、亭主たちを困らせていく。

 「買物ブギー」はその「買物」要素と、落語をはじめとする古典芸能に見られた「立て板に水」と言われるような、よどみなく、すらすらとした語り口を「ブギ」としてアレンジしたとされている。歌詞のすべてが大阪弁、40品目もの品物が歌い並べてある、「オッサン、オッサン」と連呼する部分があるなど、いま聴いてもおもしろく、とても斬新な歌だ。

 笠置はこの曲を1952年の『第2回NHK紅白歌合戦』で歌唱。これが初の紅白出場となった。昭和の名曲を数々生み出した服部にとってもこの曲は代表曲のひとつであり、服部の生誕100周年を記念して、2007年に発売されたトリビュート・アルバム『服部良一 〜生誕100周年記念トリビュート・アルバム〜』にも収録されている。服部作曲の楽曲を、息子である克久と孫であり、『ブギウギ』の音楽も担当している隆之が選曲・編曲し、世代を問わず人気のアーティストがカバーしたこのアルバムで「買物ブギー」は関ジャニ∞(現・SUPER EIGHT)にカバーされている。

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