『初恋、ざらり』などから考える“普通”とは一体何か 小野花梨&風間俊介が選ぶ未来

『初恋、ざらり』“普通”とは一体何か

 “普通”って、一体何なんだろう。このところ、そんなことをよく考えている。その理由は明白だ。知的障害のあるキャラクターが登場するドラマを数本連続で観たからである。

 最初に観たのは、2023年夏クールのドラマ『初恋、ざらり』(テレビ東京系)だった。本作はざくざくろの同名漫画を原作に、自閉症と軽度知的障害のある主人公の有紗(小野花梨)と、アルバイト先で出会った10歳年上の先輩・岡村(風間俊介)が織りなすラブストーリー。障害を隠して働くも、仕事でのミスが多く、人間関係もスムーズにいかない有紗を岡村がサポートする形で2人は惹かれ合っていく。

ドラマ『初恋、ざらり』

 不器用だけど、純粋で愛おしい彼らの関係を阻むのが、“普通”という概念だ。有紗は障害のない人たちが当たり前にできるようなことができない自分に劣等感を抱いており、常に「自分も普通になりたい」「自分も誰かの役に立ちたい」と精一杯目の前のことに取り組んでいる。そんな彼女の素直で一生懸命なところに好感を持った岡村。しかし、交際がスタートし、その好きだった部分が障害の特性であることを知った途端に複雑な感情が芽生えていく。「有紗ちゃんは有紗ちゃんだから」と障害を受け入れつつも、有紗のカミングアウト以降、タバコの量が増えたのは彼自身が両親から“普通”を求められてきたから。障害の有無にかかわらず、有紗のことが好きだし、大切にしたい。だけど、彼女との未来を選ぶことで自分が“普通”からはみ出るのは怖いという、彼の渦巻く葛藤が「世界で2人だけだったらいいのに」という台詞に集約される。

 そんな岡村に、有紗が免罪符のように囁くのが「障害といっても軽度」「私は言われなきゃわからないって言われる」という言葉だ。知的障害は一般的に知能指数(IQ)と適応機能(生活能力)に基づいて、軽度・中度・重度・最重度の4つの等級に分類され、それによって療育手帳を取得することで受けられる支援やサービスの内容が変わってくる。有紗は軽度で、たしかに見た目や少し関わった程度では気づかない人がほとんどだろう。

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 『24時間テレビ』内で放送されたスペシャルドラマ『虹色のチョーク 知的障がい者と歩んだ町工場のキセキ』(日本テレビ系)でも、同じ障害者雇用枠で採用された従業員の中で周囲としっかりコミュニケーションが取れて、リーダーを任される人もいれば、コミュニケーションは苦手だけど、こだわりの強さを活かして黙々と進められる作業に就いている人もいたりと、それぞれが持つ障害の程度の差が描かれた。

 彼らの仕事を通してやりがいを得たい、必要とされて生きる喜びを感じたいという気持ちを尊重し、障害のない社員たちがサポートする。そんな光景が理想的に描かれつつも、作中では社員の一人から「社長は障害者しか見てない」という不満も飛び出した。少し似たところでいえば、『初恋、ざらり』でも、シングルマザーのパート従業員が「守られてていいよね」と有紗に鬱憤をぶつける場面がある。障害の有無に限らず、また障害の程度によらず、誰もが尊重されるべき存在。それなのに、どうしてか私たちは“普通”とか、“普通じゃない”という言葉で人と人を分けたがる。

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