今期、もっとも観るべき作品は? 評論家が選ぶ、2023年夏ドラマ注目作ベスト5

2023年夏ドラマ注目作ベスト5

ドラマ評論家・成馬零一が選ぶ夏ドラマベスト5

1.『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』(テレビ東京系)
2.『初恋、ざらり』(テレビ東京系)
3.『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)
4.『VIVANT』(TBS系)
5.『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系)

『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』

『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』©「量産型リコ」製作委員会2023

 第1位の『量産型リコ -もう1人のプラモ女子の人生組み立て記-』は、スタートアップ企業「ドリームクレイジー」の社長のリコこと小向璃子(与田祐希)が、会社内で起こる人間関係のトラブルをプラモデルを作ることで解決していく1話完結のドラマだ。

 2022年に放送された『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』の続編という位置付けだが、「もう一つの世界」を生きるリコの物語という設定になっており、前作のメインキャストが舞台を変えて続投している。

 『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などのグルメドラマのフォーマットをプラモ作りに落とし込んだドラマで、基本的には乃木坂46の与田祐希がプラモ作りに没頭する姿をかわいく撮ることを第一に作られた、気楽に楽しめるアイドルドラマとなっている。

 同時にドラマとしても作り込まれており、会社の問題とプラモ作りで解決する物語が実に見事だ。登場するプラモの選択も含めて「今回はそうきたか!」と毎週、驚かさせる。

 何より面白いのが、根は真面目だが、熱量の低いリコたち若手社員の描き方。タイトルにある“量産型”とは、若くて有能だが突出した個性を持たない入れ替え可能な存在(だと自分のことを思い込んでいる)リコたち若手社員の自意識を表しているのだが、乃木坂46という大所帯のアイドルグループのメンバーである与田に、リコを演じさせる批評性が実に効いている。

 そんなリコがプラモを作ることで自分を見つめ直し、仲間たちと成長していく姿は、現代のお仕事ドラマとして秀逸だ。

『初恋、ざらり』

『初恋、ざらり』©「初恋、ざらり」製作委員会

 第2位の『初恋、ざらり』は、運送会社で働く軽度知的障がいと自閉症を抱える女性・上戸有紗(小野花梨)とバイト先の主任・岡村龍二(風間俊介)の切ないラブストーリー。一度に複数のことを考えて冷静な判断を下すことが苦手な有紗は、簡単なミスを繰り返すため、職場は長続きせず、男に強引に迫られるとすぐに体を許してしまう。

 そんな有紗を、最初はピュアでかわいい女の子だとしか思っていなかった岡村が、彼女の障がいのことを知って以降、理想の関係を模索していく姿を、繊細かつ丁寧に描かれている。

『真夏のシンデレラ』

『真夏のシンデレラ』©フジテレビ

 第3位の『真夏のシンデレラ』は夏の海を舞台にした男女の恋愛群像劇で、久しぶりに月9(フジテレビ系月曜夜9時枠)らしいドラマが帰ってきたと話題になっている。

 森七菜、間宮祥太朗を中心とした若手キャストと、2022年にヤングシナリオ大賞を受賞し、これが連ドラデビュー作となる市東さやかを抜擢した脚本も、かつての月9を思わせるフレッシュな座組みだと言える。新人脚本家ゆえに荒削りな部分も多いが、キラキラとした夏の恋愛ドラマという月9の基本フォーマットの中に、今の時代の若者が感じている経済格差やヤングケアラーやシングルマザーの困難を描こうとする市東の試みを、興味深く見守っている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる