『舞いあがれ!』福原遥×赤楚衛二が表現する、幸福な“背中を押し合う”夫婦の形

『舞いあがれ!』背中を押し合う舞と貴司

「舞ちゃんは大学生の時から、空を飛びたいって夢を思い描いていた。それが巡り巡って、またその夢に出会えた。そんな奇跡みたいな巡り合わせ、逃したら後悔する」

 どれだけのパートナーが、こんなふうに相手の背中を簡単に押してあげることができるだろう。振り返れば、貴司が旅に出て全国で子供たちに短歌教室を開催する連載の話を相談したときも、舞は迷わずに背中を押した。その後、改めて家族会議を開いた舞が母・めぐみ(永作博美)にも刈谷たちとの業務提携を始めたことを報告する。その時、家族全員から応援してもらえた理由は、ばんばがかけた言葉が示している。

「やりたいことはやったらよか。私も、めぐみも、そうしてきたき」

 思えば、現代を舞台にした朝ドラだからといって、女性キャラクター(特に母親)が「自分のしたいようにやってきた」と言えることは珍しいかもしれない。めぐみは、最初こそ浩太(高橋克典)の病死を受け、急に工場の責任者という立場を押し付けられたがその後、工場の売却周りのエピソードでは彼女が「したい」と思うことを優先することができた。ばんばも、渋々ではなく自ら亡き夫と乗っていた船に乗り続けてきた。その動機が個人への想いだったとしても、結局のところそう実現したいと思ったのは彼女たちなのだ。そこに貴司を加えてみると、岩倉家はそれぞれが個々の幸せを追及する形で、共同体としての幸福度を高めていることがわかる。

 もちろん、ばんばの面倒を見るためにゆくゆくはIWAKURAの社長を辞めなければいけないめぐみや、新たな歌集を作るために自分の時間を必要とする貴司など、誰かのために自己を犠牲にする行為が一切ないというわけではない。しかし、そういうのは結局のところ順番のようなもので、めぐみがIWAKURAを復興したい時に舞がパイロットの夢を諦め、営業に尽力していた時のことも含め、代わりばんこに巡ってくるものだということを本作は教えてくれる。自分がやりたいことをやらせてもらえる時は、それをさせてくれる人のためにも全力で突き進むべきだということ。そして何よりも、舞が貴司に「歌に集中したい時はいつでも言ってな。私の仕事と違って、時間区切るの難しいはずやから」と伝えたように、相手の事情も理解し感謝することの大切さも忘れてはいけない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
2022年10月3日(月)から 2023年4月1日(土)まで
総合:8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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