『大奥』山本耕史が仲里依紗に“かつての自分”を重ねる 溢れ出した綱吉の積年の思い

『大奥』綱吉の積年の思いが溢れ出す

「まことの男の頂に俺は立ちにきたのだ」

 五代将軍綱吉(仲里依紗)の御台所・鷹司信平(本多力)が京から呼び寄せた右衛門佐(山本耕史)は博識で人一倍頭が切れる。綱吉やその父・桂昌院(竜雷太)にも「曲者」と言わしめた男だ。

 しかし、貧しい公家出身の彼が持つ賢さは元々、優秀な“種付け馬”として女性たちから選ばれるための利点に過ぎなかった。ただ、子種を分け与えるだけの日々。それは右衛門佐にとって、つまらぬことであったのだろう。人として確かな力を得ることができるのかを試しに来たという右衛門佐の大奥入りの理由はゲーム感覚に近い。

 だが、実際に大奥総取締という大きな頂に立った時、右衛門佐が出会うのは“かつての自分”。誰かの目的のため、手段として扱われ続けてきた綱吉だ。NHKドラマ10『大奥』第6話では、綱吉の世継ぎという女将軍の天命を全うしようとする凄まじいほどの覚悟と、そのために擦り減らしてきた心を仲里依紗が圧巻の熱量で体現した。

 自身がお褥すべりの年齢であることを理由に側室を辞退し、代わりに長らく空席だった大奥総取締の座を手に入れた右衛門佐。前任者は、すでに大奥を去った三代将軍家光(堀田真由)の側室・有功(福士蒼汰)である。いまや大奥は、彼が願ったものとは真逆の嫉妬や欲望渦巻く男と女の世界となった。

 それを牽引するのが有功を一番に慕う玉栄こと、桂昌院であるというのが皮肉だ。大奥の実質的な最高権力者で有り、御台所とも対立する桂昌院は自分が擁立する者との子を綱吉に生ませるためにあらゆる手を尽くす。自身もかわいがっていた孫・松姫の死も嘆き悲しむことこそすれ、その存在ですら代替え可能なものとして綱吉に子作りを促す桂昌院。しかし、綱吉に子供ができないのは過去の殺生が原因であると信頼する僧侶に告げられるや否や、動物の殺生を一切禁ずる「生類憐れみの令」を発令させた。

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