『ウェンズデー』“のけ者”たちのヒーローに魅了されること間違いなし!

『ウェンズデー』“のけ者”主人公の魅力

 Netflixで配信されたドラマ『ウェンズデー』は観ただろうか。『アダムス・ファミリー』の登場人物であるウェンズデーを主人公にしたスピンオフだ。それをティム・バートンが製作総指揮・監督を担当している。『アダムス・ファミリー』の大ファンだというティム・バートンはきっとこう思ったに違いない。「『アダムス・ファミリー』のウェンズデーを主人公にして、『ハリー・ポッター』みたいな学園を舞台に連続殺人事件に挑ませたら超おもしろくない?」。そうだね、ティム・バートン。超おもしろかったよ。そんなの面白くならないはずがないし、あんたが監督したから超おもしろかったよ。

 そもそも『ハリー・ポッター』のような学園を舞台にした青春×殺人ミステリという内容が最高だ。『ハリポタ』直撃世代であるところの筆者は、それこそキッズの頃自分にもきっとホグワーツの入学許可書が来るに違いないと11歳を過ぎるまで本気で思っていた。来なかった。それから筆者は殺人ミステリが大好きだ。なぜなら殺人ミステリは大抵の場合人が死ぬからだ。

 そして『ウェンズデー』は『ハリー・ポッター』みたいな学園を舞台に連続殺人事件が起きる作品だった。『ハリー・ポッター』の世界観は最高なのだから、そこで連続殺人事件が起きればもっと最高というわけだ(そもそも『ハリポタ』の時点で人が大量に死ぬ)。もちろんただの連続殺人事件ではない。そこには怪物の影があり、学園の深く恐ろしい負の歴史も関わってくる。その深淵なる謎に挑むのが、我らが主人公にしてアダムス・ファミリーの長女ウェンズデー・アダムス(ジェナ・オルテガ)である。

 はじめて自分が本作におけるウェンズデーのビジュアルを見た時、強い衝撃を受けた。完璧だと思った。めちゃくちゃかわいく、そしてめちゃくちゃかっこいいのはもちろん。それ以上に完璧だと思わされた。長い映画の歴史の中、時折普遍的かつ強度の高い“完璧”と思わされるビジュアルの主人公が現れる。役者の魅力とキャラクター性が完璧に調和し、画面を引き締めるような存在だ。

 例をあげると『用心棒』の三船敏郎、『ブレイド』のウェズリー・スナイプス、『マッドマックス2』のメル・ギブソンなどがそうである。そして、それらには本質的な共通点がある。黒く、仏頂面で、孤独でタフということ(ドラマ作品ではあるが)。本作のウェンズデーもそうだ。どんな時でも黒を基調としたデザインの衣装を身に纏い、挑むような仏頂面を崩さず、周囲から孤立し怪物に襲われようとも連続殺人事件に挑むのをやめないタフな精神を持っている。ウェンズデーには三十郎やブレイド、マックスに比肩するキャラクターの強度がある。そう思わされた。

 そして同時にこう思った。「これは10代の頃に出会っていたら大変なことになっていたぞ」と。もし10代の頃に『ウェンズデー』に出会っていたら、黒ずくめの恰好をして仏頂面で皮肉のひとつやふたつ言って見せたのではないだろうか。それで痛いやつとして孤立していたのではないだろうか。それくらい、ウェンズデーは強烈かつ魅力的なキャラクターだ。なにせウェンズデーも陰気な性格をしている。

 趣味は小説執筆で、友達はいない。黒い衣装を身に纏い、仏頂面をひっさげるその姿はまるで葬式の擬人化だ。ウェンズデーは一見、スクールカーストにおける最下層に位置する「ゴス」なのだ。その一方で周囲を疎まれながらも決して己を曲げず、孤立しながも憮然としている自我の強さがある。そして口を開けば痛烈な皮肉と鋭敏な頭脳で周囲をアッと言わせる。そう、ウェンズデーは陰気なティーンエイジャーが影響を受けてしまいそうな要素が盛り盛りなのだ。たとえばあなたが陰気な10代で、ろくでもない青春を送っていたとして、ウェンズデーに影響されずにいられるだろうか。自分もウェンズデーのように周囲の陽キャをアッと言わせるような皮肉を言ってやろうと枕の上で夢想せずにいられるだろうか?

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