『恋するムービー』完結後だからこそ気付ける家族愛 ギョム×ジュンの名場面が忘れられない

Netflixシリーズ『恋するムービー』は、俳優を夢見ていた映画評論家のギョム(チェ・ウシク)と映画監督のムビ(パク・ボヨン)が、過去の別れを乗り越えながら成長していく物語である。ギョムはムビの映画制作を支えながらも、自らの道を見つけるために映画業界を離れる決断をし、ムビもまたギョムの決断を尊重しつつ、新たな創作活動に励む。2人は、互いに依存する恋愛関係ではなく、それぞれが自立したうえで支え合う、成熟した関係として描かれている点が評価された。

本作が配信されてから時間が経った今だからこそ、広く人気を集めたロマンス要素だけでなく、より深いテーマを持つエピソードに目を向けることができる。その中でも、第7話のジュン(キム・ジェウク)とギョムの兄弟の物語は、感情的なピークのひとつとして特筆すべきだ。第7話「今までありがとう これから新しい冒険を楽しんで」では、主人公・ギョムの兄・ジュンが長年隠してきた本心が明かされ、彼の人生と死をめぐるストーリーがクライマックスを迎える。恋愛を超えた家族の絆、そして生や愛の本質を問いかけるエピソードとして、シリーズの中でも最も心を揺さぶる回である。ギョムにとってジュンの存在がどれほど大きかったのか、その喪失がどれほど深いものだったのかが強く描かれ、単なるロマンスとは異なる感情の深みをもたらしている。
20歳で両親を亡くしたジュンは、9歳の弟・ギョムを育てることを選び、それ以来、彼の人生は「家族のためのもの」となった。仕事に追われ、趣味も持たず、ギョムの幸せを第一に考えて生きてきた彼の姿は、一見すると「不幸」に見えるかもしれない。しかし、ジュンにとって、ギョムと過ごす時間こそが生きる意味であり、彼の唯一の「幸せ」だった。

第7話の最大の衝撃は、ジュンが「生きたい」と言った瞬間である。これまで彼は、自分の人生に対して大きな欲を持たず、静かにギョムを支え続けてきた。しかし、病が進行し、残された時間が少ないと知ったとき、初めて「生きたい」という強い感情を口にした。これは、彼がギョムのためにではなく、自分自身のために生きることを願った、最初で最後の瞬間だったのかもしれない。
ジュンはバーベキューをしたり、ハリウッドへの旅行を提案したりと、これまでとは違う行動を見せ、ギョムはそれに違和感を覚える。そしてジュンがしていることは彼自身のためではなく、ギョムに最期の思い出を与えるための行動であることに気づく。「僕を気遣うような生き方はやめてくれ」というギョムの怒りは、単なる苛立ちではなく、ジュンの愛を重く感じすぎてしまったことへの悲しみの表れでもあった。

ジュンが残したノートには「俺の選択はお前だった」と書かれていた。彼は「家族のために生きた」のではなく、「自分の意志でギョムと共に生きることを選んだ」のである。ギョムにとって、この言葉は救いであり、同時に深い喪失感をもたらした。