中村倫也主演『狐晴明九尾狩』のゲキ×シネ公開を通して考える 舞台を映画で表現する魅力

ゲキ×シネ、舞台を映画で表現する魅力

 中村倫也が主演した2021年 劇団☆新感線41周年興行 秋公演 いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』が「ゲキ×シネ」として6月24日から全国の映画館で上映中だ。

 「ゲキ×シネ」とは話題の舞台を映像化し、より多くの人に届けたいという思いで生まれた新感覚のエンターテインメントだ。20台近いカメラを駆使して、舞台のあらゆる瞬間をさまざまな角度から撮影し、映画館用に編集。大スクリーン&高音質で迫力ある舞台映像を楽しむことができる。2004年に第1弾の『髑髏城の七人~アカドクロ』が公開されて以降、20作品以上が上映されてきた。

 『狐晴明九尾狩』は、宮廷陰陽師として仕える安倍晴明(中村倫也)が、大陸からきた狐霊・タオフーリン(吉岡里帆)らとともに、陰陽師宗家の賀茂利風に化けて日の本支配を企てる九尾の妖狐(向井理)と死闘を繰り広げる伝奇ファンタジー。2021年9月から11月にかけて東京と大阪で上演され、連日満員で好評を博した。

 筆者は『狐晴明九尾狩』の大阪公演をはじめ、劇団☆新感線の舞台に度々足を運んできたが、「ゲキ×シネ」を観るのは今回が初めてだった。というのも、舞台は役者と観客が同じ空間、同じ時間を共有して作り上げるナマモノ。生身の役者の放つ熱量は何にも変え難く、映像では舞台から感じられるパワーが半減するように感じていたからだ。

 しかし本作を観て、その思い込みは打ち砕かれた。昨年劇場で目にした舞台とは全く別の、すばらしい映画だったのだ。一般的な舞台の記録映像やオンライン配信、リモート演劇とは一線を画している。撮影前から緻密な計画を立てているというだけあって、まるで劇場という場を使って映画を撮っているような。演劇ということを忘れて時代劇映画を観ていると錯覚するような。しかも実際に観客の前で行った公演を撮影しているので緊張感がみなぎっている。とにかく映画としての完成度が高い。

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