『持続可能な恋ですか?』が描いた“結婚”とは 晴太と杏花の“私たちらしい”道に幸あれ

『持続可能な恋ですか?』が描いた“結婚”

「結婚とは愛し合う他人同士が分かり合いたいと願い、共に年を重ね、互いの変化を慈しみ、それでもなお分かり合えないことを知る営み。古来、人類が繰り返してきた永遠に続く愛情への無茶な挑戦」

 父・林太郎(松重豊)は“結婚”をこのように定義した。颯(磯村勇斗)は“持続可能な恋”は「叶わなかった恋だけ」だとしたが、“結婚”も真摯に向き合えば向き合うほどに完全には“分かり合えない”部分が見えてくるからこそ、それを分かり合いたいと願い、励み続けることで“持続可能な恋”になり得るのかもしれない。そもそも「営み」とは、怠ることなく永続的に物事に励むことを指す(そして、“愛し合う男女”とせずに、“愛し合う他人同士”とするところに本作が守り抜いてきた誰のことも排他的にしてしまわない優しさと本質を突く鋭さが見える)。

『持続可能な恋ですか?』10話

 『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系)最終話では、すれ違いにすれ違ってきた杏花(上野樹里)とシングルファーザー・東村晴太(田中圭)が様々な結婚の形、家族の在り方に触れ、ようやく“普通の幸せ”なんて実態のないものから解き放たれた。

 林太郎と日向先生(井川遥)は、「お互いの心の中に住んでいるのは間違いなくふたり」「確かなのは私たちの今この瞬間の気持ちだけ」だとし事実婚の週末婚を選んだ。そもそも陽子(八木亜希子)は林太郎との結婚時にいつでも彼が自由になれるようにと離婚届を先に渡そうとしていた。虹朗(鈴木楽)は「ママみたいなパパ好き」だと言い、世間一般で言われるところの父親・母親の役割や父性、母性を「どっちでもいい」と一蹴する。

 晴太の良い奥さんになり、虹朗の良いお母さんになりたいと願った杏花に「杏花さんには無理です。続きません、そんな無理」と頭ごなしに言い放っていた晴太が言葉の限りを尽くして伝えるプロポーズは何とも晴太らしく、また紆余曲折を経た2人だからこそ辿り着けた現在地そのものだった。

 「お父さんになってもらえませんか? お母さんにならなくてもいいです。お父さんがふたりいても、僕がお母さんになる時もあって、どっちでもない新しい家族でもいいです。そういう普通の結婚じゃなくてもいいですか?」。そして伝えた「普通じゃないくらい杏花さんのことが好きです」という一世一代の告白。

 これに対して「分からないけど分かりたいです。誰よりも晴太さんのこと。晴太さんの話、聞きたいです」という杏花の答えは最大級の愛情表現だろう。そしてこの気持ちこそが“持続可能な関係性”に必要不可欠な原点になる。

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