『持続可能な恋ですか?』林太郎が実感した“普通の幸せ” 晴太はその“呪い”を超えられるか
「生きていくということは変化していくということだ」
父・林太郎(松重豊)のこの言葉の裏には、妻・陽子(八木亜希子)と娘・杏花(上野樹里)の存在によって自分が“父親になれた”とびっきりの奇跡であり“普通の幸せ”があった。
『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系)第9話では、林太郎と杏花の間に血縁関係がないことが明かされた。「杏花には普通の幸せを望む」とシングルファーザー・東村晴太(田中圭)に何気なく言い、日向先生(井川遥)からの交際オファーには「あなたは普通に幸せになれる人です」と断り遠ざける。いくら自分が“何物にも代えられない宝物に出会えた幸せ”を噛み締めていても、それを杏花に言い出せないうちは林太郎もどうしても“普通の幸せ”にこだわってしまうところがあったのかもしれない。自分はこの特殊な事情を飲み込めても、それを杏花や日向先生にまで背負わせることはないと。自分の中ではこの形が“普通の幸せ”であっても、杏花や日向先生も同じく“普通”のことだと受け入れてくれるかはわからないし、もちろん受け取り方を強制などできない。
ただ、自分たちの結婚の経緯を伝えた後に杏花の口から出た「ありがとう、結婚してくれて」という言葉を聞いて、林太郎自身の中でこの34年間の一つの答え合わせができたのだろう。そしていかにこの“普通の幸せ”というものが実態のない心許ないものなのか改めて思い知ったのだろう。「そういう優しさや理性を超える強い思いが欲しかったんです。普通の幸せって何ですかね?」とは日向先生が晴太に向けて言った言葉だが、“普通”なんていう曖昧模糊で主体性のない2文字にこちらの覚悟や決意を当て嵌め一括りにしないでほしいのだろうし、そんなテイの良い2文字で人の幸せを定義しないでほしい、みくびらないでほしいという思いがあったように思える。とてもつまらない言い訳であり、日向先生からすればそれが林太郎の本気度を測る試金石にも映ったのだろう。
強いて言うなら“普通の幸せ”とは、日向先生が入院したのを機にそれが途絶えるかもしれないと林太郎が痛感することになった“会いたい人に会える今”とも言い換えられるだろう。そして晴太の中の“普通の幸せ”の呪いを解こうとする。「あの子の父親になることができて“普通に幸せ”です。杏花は私の娘です。どうか……あの子を信じてみてやってください」と頭を下げる。