『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』命がけの戦い ハーマイオニーの切ない旅立ち

『ハリー・ポッター』第7作の魅力をおさらい

 全8作あるハリー・ポッターの映画シリーズのうち、7作目にあたるのが『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』(2010年)である。1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』が2001年の公開であり、当時12歳だった主演のダニエル・ラドクリフは、『死の秘宝 PART1』公開時には21歳になっている。すっかり大人びた俳優陣によって演じられる『死の秘宝』は、シリーズのエンディングを飾る2部作であり、PART2は2011年に公開された。『賢者の石』のイメージが強い観客は、作品を観るたび、つい「大きくなったねえ」と親戚の叔父さんや叔母さんのような気持ちになってしまうはず。『死の秘宝 PART1』を観る前にどのような展開があったか、おおまかなあらすじを確認しておけば、混乱せず物語に入り込めるだろう。

 本作の鑑賞前におさえておきたいのは、前作『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(2009年)の最後で、白い長髪と長いひげが特徴のダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)が殺されてしまったことから、登場人物たちが否応なしに命がけの戦いへ巻き込まれていくというストーリーの流れだ。また、主人公たちが戦う最大の敵はヴォルデモート(レイフ・ファインズ)という怖ろしい人物である点。さらには、宿敵ヴォルデモートを倒すには「分霊箱」と呼ばれるアイテムを探し出して破壊しなければいけない、という3つのポイントである。これさえ知っておけば、さほど予備知識はなくとも特に混乱せず作品を楽しめるだろう。なお分霊箱は7つあり、すべてを破壊する必要があるという設定も覚えておくと、ストーリーが飲み込みやすくなるはずだ。

 主人公たちに襲いかかる恐怖と暴力。ダークなテイストが売りの本作は、冒頭から悲壮な決意がみなぎっている。「もう、家は安全ではない」のせりふと共に、命がけの旅へ出かける三人。わけても、ハーマイオニー(エマ・ワトソン)が家族と別れて旅立つシーンは印象的だ。家族の安全を守るため、両親の記憶から共にすごした日々を魔法で消し去り、そっと家を出るハーマイオニー。別離を描いたオープニングには重い雰囲気が漂う。家族写真から消えていくハーマイオニーの姿も悲しい。背後で流れるオーケストラの美しい音楽がぐっと緊張感を高めたところで、タイトルクレジットが登場する編集もすばらしいものだ。

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