『ファンタスティック・ビースト』新作の好調が示す、キャンセル・カルチャーと市場の乖離

『ファンタビ』新作の好調が示すこと

 先週末の動員ランキングは、『ファンタスティック・ビースト』シリーズの3作目『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が、土日2日間で動員50万4000人、興収7億8600万円をあげて初登場1位に。オープニング3日間の累計は動員68万5197人、興収10億5573万3460円。この数字は、前作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のオープニング成績の約72%。この目減り分をコロナ禍の余波がまだ続いていると見るか、『ハリー・ポッター』フランチャイズが下降局面に入ったと見るかは判断が難しいところだが、今年公開された実写外国映画としては『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に次ぐ好スタートとなった。

 『ファンタスティック・ビースト』シリーズは、2001年公開の『ハリー・ポッターと賢者の石』から数えると現時点で既に21年という、そのシリーズの長さや人気の安定感においても異例だが、2007年公開の『ハリー・ポッター』シリーズ5作目の『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』から継続してデヴィッド・イェーツが監督を務め続けているという点でも異例のシリーズ作品だ。

 デヴィッド・イェーツは5部作(もしかしたらまた最終作が前編と後編に分かれたりするかもしれないが)になると予告されている『ファンタスティック・ビースト』シリーズすべての監督を担当することが発表されているので、このペースでいくと9作品(もしくはそれ以上)、20年以上にわたって監督としてのキャリアが一つのフランチャイズに拘束され続けることになる。例えばジョージ・ルーカスのように自分が生み出した物語に縛られ続けるのならまだわかるが(それでもルーカスは『スター・ウォーズ』の2作目と3作目で監督を手放し、やがて権利も手放したわけだが)、雇われ監督として働き盛りの40代と50代とおそらくは60代の前半を一つのフランチャイズに捧げるのは、映画作家にとって幸福なことなのだろうか? まあ、大きなお世話ですが。

 そんな盤石の体制で製作されてきた『ファンタスティック・ビースト』シリーズだが、既報の通りここ数年は複数のキャンセル騒動やスキャンダルに見舞われてきた。世界中で一般ニュースとしても大きく報じられてきたのは、『ハリー・ポッター』シリーズの原作者であり、『ファンタスティック・ビースト』シリーズでも脚本を手がけているJ・K・ローリングのトランスジェンダーに関する発言が巻き起こした騒動だ。最初に彼女のツイートが大炎上したのは2020年7月のことだが、つい先日も戦争の当事国であるロシアのプーチン大統領に不本意なかたちで一連の発言やキャンセル騒動が取り上げられ、本人がそれに猛抗議する事態になるなど、未だ沈静化する気配はない。

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