『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』命がけの戦い ハーマイオニーの切ない旅立ち

『ハリー・ポッター』第7作の魅力をおさらい

 本作は撮影の質が高く、観ていてあっと驚くような美しいロングショットが数多くの場面で披露される。見渡す限り何もない荒地を、汽車がけむりを立てながら走る様子は実にすばらしい。雄大な自然と、空からダイナミックに撮影された汽車の力強い構図に、思わず引き込まれてしまった。また、ハリーとハーマイオニーがテントを張った川沿いのシーンも、驚くほどきれいなロケーションである。加えて、ゼノフィリウス(リス・エヴァンス)が住む一軒家も、何とも雰囲気があって、不吉な予感が増していくようだ。人気シリーズの完結へ向けて、作品のスケール感がぐっと増していく撮影のクオリティを楽しんでほしい。

 また、ロン(ルパート・グリント)が分霊箱を破壊するとき、分霊箱が見せる幻影も印象的だ。ハリーという特別な存在と比較すれば、あまり目立たないロンの劣等感をこれでもかと刺激する分霊箱。「ハリー・ポッターと並んだら誰があなたを見る?」「君のママはハリーを息子にしたかった」「あなたを選ぶ女がいる?」「ハリーに比べたらカスよ」など、それを言われたらとても立ち直れないと同情してしまうような、残酷な言葉が連続する。こんなにひどい仕打ちがあるだろうか。分霊箱からの幻影攻撃で追い詰められたロンの表情は本当に切なく、声援を送ってしまうこと必至だ。

 世の中全体が息苦しい監視社会となり、どこにも逃げ場がなくなっていく様子は、ナチスドイツのイメージを引用しながら描かれていく。差別や不寛容、密告といったテーマを、ハリー・ポッター的にアレンジしながら物語に取り入れていくのも効果的だ。これまでのシリーズ全体を締めくくりつつ、大いなる危機、大切な仲間との別れといったできごとを描写し、最終作品となる『死の秘宝 PART2』へ続いていく本作の重厚な作りをぜひ楽しんでほしい。

■放送情報
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
TBS系にて、5月27日(金)19:00〜放送
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、レイフ・ファインズ、アラン・リックマン、ボニー・ライト
監督:デイビッド・イェーツ
製作:デイビッド・ヘイマン、デイビッド・バロン
脚本:スティーブ・クローブス
原作:J.K.ローリング
美術:スチュアート・クレイグ
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