長澤まさみがつなぐ2つの『ドラゴン桜』 鈴鹿央士演じる藤井の決断も胸に迫る

『ドラゴン桜』藤井の決断が胸に迫る

 桜木(阿部寛)の指導によってメキメキと実力を伸ばしてきた東大専科の生徒たち。このままこの状況が続けば、東大合格も現実のものになる。生徒たちの合格を可能にするのは、積み重ねた努力と仲間との絆。はたして時間は彼らの問題を解決したのだろうか? 『ドラゴン桜』(TBS系)第9話では、大学入学共通テストまでの115日を一気に駆け抜けた(以下の記事にはドラマ本編の内容に関する記述が含まれます)。

 第9話で桜木が伝授したのは「共通テストの心構え5カ条」。「終わった教科のことは考えるな」「難しい問題にとらわれるな」「1日目の試験後は一人で帰れ」「答えを問題用紙に書いておけ」「自分さえ受かればいいと思って挑め」。短時間で大量の問題をこなす共通テストを乗り切るコツは、平常心で勝負に徹すること。ポイントは不安のコントロールだ。桜木によれば「どんな人間でも大事な本番前には不安になるのは当然」。だから「本番に強い人間は自分が不安を抱いていることを自覚し、ミスを想定し心の準備をしておくんだ。完璧なんか求めんな」。不確定要素を伴うのが勝負の常であり、様々な場面に応用できそうなアドバイスだった。

 本作をただの受験ドラマと侮ることなかれ。誰もが学ぶことと向き合う現代、現役の学生や元受験生の社会人、未来の受験生を持つ親だけでなく、何かにチャレンジする人なら『ドラゴン桜』から少なからず気付きを得ることができる。まさに視野を広げてくれるドラマといえる。「受験とは己と向き合うことだ」と桜木が説くように、生徒たちも限界に挑む中で人間的に成長していく。

 なかでも藤井(鈴鹿央士)の文転が胸に迫った。藤井は共通テストで思うような点数が取れず、東大受験の決意が揺らぐ。本番に弱いと言えばそれまでだが、努力を重ねた末に直面したどうにもならない壁。「怖い」というのは率直な思いだろう。それでも、お先真っ暗な状況で桜木のアドバイスを聞き入れたところに藤井の成長が集約されていた。もし今までどおりなら、プライドとコンプレックスから意地を貫いて理系で受験していたに違いない。しかし、東大専科で学びうちに藤井は天野(加藤清史郎)や健太(細田佳央太)に心を開き、勉学に打ち込む中ですっきりとした表情に変わっていった。恥や外聞を捨てることは、以前の藤井なら耐えがたいことだったはず。書き換えた目標の数は藤井の苦闘の歴史を表している。

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