『その女、ジルバ』はなぜ心に刺さるのか “普通”の暮らしや悩みを描いた40代女性のリアル

『その女、ジルバ』はなぜ心に刺さるのか “普通”の暮らしや悩みを描いた40代女性のリアル

 池脇千鶴が9年ぶりに連続ドラマ主演を務めている『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)が、女性たちの高い支持を得ている。

 本作は有間しのぶによる同名コミックを原作としたもの。主人公・新(池脇千鶴)はアパレルで販売から「姥捨」と言われる倉庫勤務に異動させられ、沈んだ気分で40歳の誕生日を迎える。しかし、人生終わりモードになっていたところ、「ホステス求ム! 40才以上」と書かれた超熟女バー「BAR OLD JACK&ROSE」の求人に目を留め、思い切って飛び込んだところから、新たな人生がひらけていくという物語だ。

 池脇が演じるシジュー女性は、生々しくリアルで、「ドキュメンタリーみたい」という声が出ていたほど。しかし、そのリアリティもさることながら、何よりこの作品が多くの女性の心に刺さるのは、様々なシジュー女性、それも、これまでドラマではあまり描かれることのなかった“普通の人々”を描いている点ではないかと思う。

近年、登場が少なかった“シジュー女性”

 思えば、ドラマに出てくるシジューの女性たちは、昔は「主人公のお母さん」が主流だった気がする。ところが、近年ではシジュー女がそもそもあまり登場していない。

 女性の恋愛モノがメインとなったTBS火曜枠では、上白石萌音主演の『恋はつづくよどこまでも』のヒットを機に、30代の多部未華子を除き、松岡茉優、森七菜、上白石萌音の再登板と、20代女性を主人公としてきた。「お母さん」ポジションは、草刈民代(50代)、石野真子(60代)、南果歩(50代)、宮崎美子(60代)だ。

 TBS金曜ドラマ枠は、木村佳乃(40代)、黒木華(当時は29歳)、高畑充希(20代)を除き、長瀬智也、山田涼介、綾野剛&星野源、伊藤英明、福士蒼汰、山下智久と、男性主演が多い。

 フジテレビの「月9」も、現在放送中の『監察医 朝顔』の上野樹里や『コンフィデンスマンJP』(2018年)の長澤まさみなど、30代女性の主演作を除き、織田裕二、沢村一樹、ディーン・フジオカ、窪田正孝、錦戸亮など、男性主演が多くなっている。フジテレビ「木曜劇場」では、大倉忠義、亀梨和也などの男性主演のほか、深田恭子、石原さとみ、松下奈緒などの30代女優と、新木優子、二階堂ふみなどの20代女優が主演している。

 日テレの土曜ドラマの場合、『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』の天海祐希・50代、『35歳の少女』の柴咲コウ・30代を除いて、男性主演だらけだ。

 また、日テレ水曜ドラマは、波瑠(20代)、浜辺美波&横浜流星(20代男女)、吉高由里子(30代)、高畑充希(20代)、杏(30代)、中条あやみ(20代)&水川あさみ(30代)、北川景子(30代)と、現在放送中の『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』主演の菅野美穂(40代)と『ハケンの品格』第2シリーズの篠原涼子(40代)を除いて、40代はいない。

 テレ朝木曜ドラマといえば、米倉涼子(第1期スタート時は30代)主演の『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズや天海祐希(50代)主演の『緊急取調室』などのシリーズモノがあるほか、波瑠(20代)、高畑充希、杉咲花(ともに20代)と男性主演の作品が並ぶ。

 改めて思う。シジュー女性はどこに行ったんだろうか。

 おそらく現実の生活で、40代女優は結婚・出産・子育てにより、露出を減らしている時期にはあるかもしれない。

 たとえば、松嶋菜々子、篠原涼子、菅野美穂など、結婚・出産を機に露出をコントロールしている女優が多数いるほか、米倉涼子や吉瀬美智子など、バリバリ働く女性像としてお仕事モノなどで多数出演している女優もいる。内田有紀のように主人公の姉や先輩ポジションもあるし、仲間由紀恵や井川遥、長谷川京子など、ミステリアス要員のような活躍の仕方もある。

 ドラマのメイン視聴者層の高齢化もあって、主人公やヒロインポジションに30代が増え、その母親は50代~60代が多く、意外に“シジュー女”はメインどころでは登場頻度そのものが少ない気がする。

 そもそもドラマでは必ずしもリアリティを追求する必要はないし、現実に即した世界を描く必要もない。むしろ現実から大きく離れたエンタメを見せてほしいとも思う。しかし、今は現実の日常と地続きの世界を描く作品が多いなか、わずかに登場するシジュー女といえば、結婚せずに専門職でバリバリに仕事に生きているか、幸せな家庭があるものの、不倫に走るかの2択にされがちだ。

 「F2層」(35歳~49歳)はおそらくドラマ視聴者のメイン層だというのに、ドラマの中に登場するシジュー女は、いわゆる専門職の「バリキャリ」か、不倫しているか、良いお母さんをしているか――リアルにみんながそうだと思うなよ? と思っていた。そうでなければ職場のお局担当か、喫茶店などのママか、江口のりこが数々のドラマで重用されているように“主人公の周りで個性を放つ”道が求められがちである。

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