『ここは今から倫理です。』『その女、ジルバ』など、“安眠”ドラマが土曜日に渋滞中!

 土曜の夜はドラマが多すぎる。

 『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系)だけは23時開始なのでかぶっていないが、そのあと23時30分からよるドラ『ここは今から倫理です。』(NHK総合)と『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系)があり、23時40分から『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)が始まる。

 どうしてこんなに渋滞しているのか。視聴率ではドラマの価値が測れないとはいえ、やっぱり視聴率は気になるもので、こんなに各局ドラマかぶりしなくてもいいではないかと思ってしまう毎週土曜日の夜。全録レコーダーがあれば全部録画できるし、配信などを駆使すればすべて観ることは可能。だが、せっかく家にいるならリアルタイムで観たいのがテレビドラマ。録画や配信で止めたり巻き戻したり早送りしたりできるゆるい状態ではなく、今、この瞬間、真剣に観るという感覚で臨みたい見応えのあるドラマばかりだから悩んでしまうのだ。

 30分~40分の短めなドラマで、週末、気楽に観られるからこそ、じっくり観たいという、いささか矛盾しているけれど、各局、良作を繰り出してきていて、土曜の23時30分台はドラマ好きにとってはパラダイスである。一作一作、その魅力を解説してみたい。

『ここは今から倫理です。』

『ここは今から倫理です。』写真提供=NHK

 読書が好きな人なら『ここは今から倫理です。』がおすすめ。ほか、学園ものや、フレッシュな俳優が好きな人にも。

 雨瀬シオリの漫画の実写化。倫理教師・高柳(山田裕貴)は、生徒たちが抱える問題を解決するため、マックス・シェーラー、キルケゴール、ソクラテス、ハンナ・アーレント……など哲学者たちの言葉を贈る。男友達の欲望を断りきれない女子生徒の問題、シングルマザーである母と男子生徒の問題、男性教師と女子生徒の問題……と何かとデリケートな問題の数々に向き合うとき高柳は、熱い精神性や身体的な衝動ではなく、あくまで怜悧に手を差し伸べる。知識があれば避けられる問題が、ないばかりに衝動や感覚で誤った道を選択してしまう者たちがいる。せっかく学ぶために学校に通っているのだから、大人になってしまう前の可能性の大きなときに、教養を身に着け、知性で困難を言語化することで乗り越えていくことの大切さを問うドラマは、世の中がどんどん簡単になっている今、観るべき作品である。

 山田裕貴演じる先生が自身もまだ迷っていて哲学者の至言に救いを求めているように見えるところも興味深い。教師が必ずしも絶対なのではなく、生徒たちと一緒に悩み苦しみながら歩いていく姿を見ることで、生きるとは何か、善と悪とは何か、あらゆるものごとに対してなぜ?と常に問いを突きつけていくことの大切さが伝わってくる。

 また、難しいことを抜きにして、学園もので楽しみなのは、生徒役を演じる俳優たちのフレッシュさ。傷つき悩み揺れ動く少年少女のなかから推しをみつけるのも楽しい。

『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』

『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(c)テレビ朝日

 業界裏話が好きな人なら『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』がおすすめ。ホームドラマやコメディが好きな人も。

 朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)や大河ドラマ『龍馬伝』(NHK総合)などを手掛ける人気脚本家・福田靖の半自伝的ドラマで、生田斗真演じる脚本家・吉丸圭佑があるとき突然、ゴールデンタイムの連ドラのチーフライターに抜擢される。テレビ局のプロデューサー(北村有起哉)や演出家(小池徹平)、主演俳優(岡田将生)などの意見に振り回されながら、綱渡りのようなギリギリな状況に苦しんでいるとき、不気味なスキンヘッドの男(浜野謙太)が現れ、圭佑をさらに迷わせる。この謎の男、浜野の怪演が伴い、不気味で楽しい。

 ちゃらっとしていて人気俳優の言いなりの事なかれ主義なプロデューサーだとか、好き勝手なことばかり言う俳優など、芸能界に実際ありそうで、こんなにも無理難題を言われ、変更に次ぐ変更のなか、短い時間で脚本を書かないといけないなら、ドラマの内容がグダグダになっても仕方ないような気さえしてくる。プロデューサーがただちゃらいだけでなく、隠していた矜持を語るところは感動的。圭祐が書いた荒唐無稽なヴァンパイアものの劇中ドラマも別途独立して作ってほしいくらいだ。

 圭佑が自宅で作業しているので、ベストセラー作家の妻(吉瀬美智子)、娘(山田杏奈)と息子(潤浩)の4人家族というホームドラマとしても見ることができる。

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