逃げた寿一と逃げられなかった寿限無 『俺の家の話』が描く“好き”との向き合い方

逃げた寿一と逃げられなかった寿限無 『俺の家の話』が描く“好き”との向き合い方

 回を重ねるごとに面白さが増している、主演・長瀬智也、脚本・宮藤官九郎によるドラマ『俺の家の話』(TBS系)である。第4話における長瀬本人によるパロディにテンションが上がったファンも多かっただろう伝説のドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)はじめ数々の名ドラマを生みだしてきたタッグが挑んだのは、異色のホームドラマだった。

 伝統ある能のシテ方の流派である二十七世観山流宗家・寿三郎(西田敏行)を頂点に絶対的な家父長制が敷かれている観山家。長男だから家を継ぐことを当然とする考え方に反発し、家を飛び出し、プロレスラーになるが、夢の挫折と結婚離婚の経験を経て、父の危篤を知ってようやく実家に戻ってきたのが息子・寿一(長瀬智也)だ。第1話では、寿一が葛藤の末、父親への愛ゆえに、家を継ぐことも父の介護を中心になってすることも「そういうもん」として了承するまでが描かれた。

 そしてそこに、なんだかんだ言って父親のことが大好きな家族と、家族同様に育ってきた芸養子・寿限無(桐谷健太)、父の婚約者のさくら(戸田恵梨香)が集い、長男の「いただきます」が一番と笑うことで、王道のホームドラマの体をしていたのだった。

 だが、第4話を終え、もともと視聴者が想定していた家族像とはだいぶ違う様相を呈している観山家である。第1話時点では寿三郎の婚約者だったさくらは、寿三郎に対する恋愛感情は全くなく、これまでも高齢者への親身な介護をすることで多額の遺産を受け取っていたことを第2話であっさりと告げ、それを知ってもなお、それぞれに父子思いの寿一、寿三郎のたっての願いによって「婚約者のふり」を続けている。

 さらに第4話では、芸養子として観山家を支えてきた寿限無が寿三郎の実の息子であり、寿一たちと異母兄弟であることが判明した。一旦はプロレスラーを引退した寿一は、家族に内緒で「スーパー世阿弥マシン」としてプロレス界でも活躍している。

 こうやって見ると、彼らは、それぞれに大きな秘密を抱えながら、担うべき「役」を演じ食卓を囲んでいるようにも見えてくる。世阿弥の「秘すれば花(秘することによって花となる)」という言葉通り、いわば「秘すれば家族」としてなんとか崩壊寸前の均衡を保っているスリリングさの上に、彼ら家族の「明るく愉快なやりとり」があることが面白いのである。

 あまりにも波乱万丈な「家の話」が描かれるためについ忘れてしまいがちではあるが、このドラマにおいてもう一つ、一貫して描かれ続けていることがある。それは、登場人物たちが「好きなもの(人)」とどう向き合うかということである。

 一度は手放し、長州力に「大好きなものを仕事にしなくてすむお前は幸せかもな」と言われた寿一は、結局「大好きなプロレス」を続けずにはいられなかった。「昼は能の稽古、夜は介護、週末はスーパー世阿弥マシン」という、好きだからこそこなせる超多忙な日々を送る彼は、「ブリザード寿」だった頃よりも、介護をしながら能の稽古に専念していた時よりも活き活きしている。これは新手の副業のススメではないか。

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