今期もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2021年冬の注目作ベスト5

2021年冬ドラマ注目作ベスト5

 2021年最初のクールとして現在放送されている冬ドラマ。撮影現場は新型コロナウイルスの影響を受けながらも、各局力を入れた様々なジャンルの豊作が揃った印象を受けるが、今期観るべきなのはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、冬ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

1.『夢中さ、きみに。』(MBS)

『夢中さ、きみに。』(c)「夢中さ、きみに。」製作委員会・MBS

 本作は2019年に話題となった和山やまの同名漫画短編集の映像化。1話の中で、林美良(大西流星)と二階堂明(高橋文哉)、二人の男子高校生を中心にした物語が並行して描かれるのだが、登場する高校生の描き方がとにかくユニークで、既存のパターンから抜け出しているのが素晴らしい。

 メイン脚本家は喜安浩平。映画『桐島、部活やめるってよ』や『幕が上がる』で知られる学園モノの青春群像劇を得意とする脚本家なだけに、短編集のエピソードを再構成して一つの世界として打ち出している。チーフ演出は『中学聖日記』(TBS系)や『MIU404』(TBS系)で知られる塚本あゆ子。プライムタイムの連続ドラマでは、万人がわかるように考慮しながら、独自の映像表現を小出しに見せるというスタンスだったが、本作では振り切っており、映像表現として見応え抜群だ。BL(ボーイズラブ)の構造を用いて、異性の性的視線に晒されることで傷ついた男の子が同性の友情に救われる物語や、恋愛とは違う男女の関係を、推し(アイドル)とファンの関係に重ねて描く作品が近年増えているのだが『夢中さ、きみに。』もその流れにある作品だろう。「尊い」という言葉が心に響く、新しい時代の青春ドラマである。

2.『俺の家の話』(TBS系)

『俺の家の話』(c)TBS

 長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本、磯山晶プロデュースという『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)、『うぬぼれ刑事』(TBS系)のチームが再結集。物語は、42歳のプロレスラー・観山寿一(長瀬智也)が能楽の大家で人間国宝の父を介護するために実家に戻る所からはじまるホームドラマ。介護、能楽、プロレスというバラバラの題材をうまく繋いで、一つの物語へと仕上げる手腕は「流石」の一言だ。

 長瀬はプロレスラーとしての身体作りはもちろんのこと、認知症気味の父親を演じる西田敏行との軽妙なやりとりも見事にハマっている。根底にあるテーマは「男らしさの軟着陸」で、加齢と共に肉体が衰えた時に、今まで強者として振る舞ってきた男がどう自分の弱さをうけいれるべきかを、「男の中の男」というキャラクターを、コミカルかつ猛々しく演じてきた長瀬が演じるのだから目が離せない。「コロナ禍」の描き方も秀逸で、家の中で家族がやりとりをする場面以外ではマスクを着用ということが徹底されている。

 ドラマにおけるコロナ禍の描写は、まだ試行錯誤だが、本作のマスクの見せ方はとても自然で、物語のノイズにならない。一つのモデルケースを提示したと言って間違えないだろう。

3.『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系)

『その女、ジルバ』(c)東海テレビ

 40歳の独身女性・笛吹新(池脇千鶴)が“40歳以上募集”と書かれたバーでホステスとして働き、そこでジルバを習うことで生きる活力を取り戻していく物語。有間しのぶの同名漫画が原作だが、漫画にくらべると実写映像ならではの生々しさが増しており、特に池脇が演じる新の佇まいは、ドラマとは思えない生々しさだった。そんな新の表情や仕草が、ジルバを習うことで変わっていくのが本作の面白さである。東海テレビは、『牡丹と薔薇』などのドロドロの昼ドラの印象が強かったが、本作は同じ東海テレビでも、近年話題となっているドキュメンタリーのテイストに近いのではないかと思う。

 また、舞台は2019年だが、物語冒頭は2020年で、新もマスクを着けていた。バーが舞台だと考えると、何らかの形でコロナ禍の影響が物語に絡んでくるのかもしれない。

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