皇族の留学は想像以上にハード? 『マンガ 赤と青のガウン』で知る、彬子女王の過酷で華麗な留学記

彬子女王が綴る皇族のリアルを漫画で読む

Amazonベストセラー漂流記

 4月2日のAmazon売れ筋ランキング「本」部門で27位に入っていたのが、『マンガ 赤と青のガウン 第1巻』(新潮社)である。三笠宮家に生まれた皇族・彬子女王のエッセイ『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP研究所)のコミック版だ。

「プリンセス」の、過酷で華麗な留学記

彬子女王(原作)、 池辺葵(漫画)『マンガ 赤と青のガウン 第1巻』(新潮社)

 三笠宮家の長男・寬仁親王の長女として生まれ、学習院大学在学中及び卒業後にイギリスのオックスフォード大学マートン・コレッジで日本美術を専攻。女性皇族初の博士号を取得したことで知られる彬子女王。その前後の経緯を綴ったエッセイとして2015年に刊行されたのが、『赤と青のガウン オックスフォード留学記』である。2024年に文庫版が発売され、39万部のベストセラーになったことでも知られる一冊だ。

 この留学記をコミックにしたのが、『マンガ 赤と青のガウン』。作画は『繕い裁つ人』『プリンセスメゾン』などで知られる池辺葵が担当している。ふんわりとしたタッチは、軽妙なエッセイの語り口によくマッチしている。

 本書では彬子女王の博士号授与式に始まり、幼少期からのオックスフォードへの憧れや「皇族の留学」という状況自体の解説、オックスフォードにおける生活や日本人留学生独特の悩みなど、留学とその前後に関する様々なトピックが、彬子女王の目線から紹介される。学位授与式の日程が東日本大震災の二ヶ月後だったため、宮内庁から授与式出席への苦言が届いたこと、そして留学に関して揉めたこともあった父・寬仁親王が「文章発表でも記者会見でもして批判を止めるから、安心して行ってこい」と送り出してくれたことが冒頭から綴られており、いきなり「皇族が留学するのって大変なんだなあ」という気持ちになる。

 オックスフォードでの生活に関して綴られたパートも、なかなか興味深い。基本的に寮生活、昼と夜の食事は『ハリー・ポッター』シリーズのような巨大な食堂で食べ、特に夕食はカフェテリアスタイルのカジュアル・ディナーとガウンにジャケット・ネクタイ着用で出席するフォーマル・ディナーがあるなど、さすがにオックスフォードだな……と思わされるディテールだ。出席点や平常点がなく、年度末の試験に落ちたらハイそれまで、というオックスフォードのシステムはなかなか厳しく、彬子女王をはじめ学生は猛勉強に励む。このあたりの厳しさも、実際に留学した人間ならではのリアルさで語られる。コミックの絵柄がふんわりしているから中和されているものの、よく読むとオックスフォードでの勉学はかなり厳しそうだ。

身辺警護から紐解く、皇族の日常と素顔

 ただ、それらの内容よりずっと個人的に興味を引いたのが、皇族である彬子女王が留学するにあたっての護衛に関するエピソードだ。そもそも普段、日本国内にいる時は、皇族には警衛の専門スタッフがつく。皇宮警察所属の護衛官が、どこに行くにも四六時中ついてまわるのである。我々一般市民からは想像もつかない生活だが、では当の皇族はいったいこの状態をどう感じているのか。気になる感想が彬子女王自身によって綴られ、そこにマンガとして絵が加わることで、ビジュアル的に状況や感覚がわかりやすくなっている。

 日本国内であれば護衛官がついてまわればいいが、海外、それも長期間の留学という状況での身辺警護はどのような形になるのかを説明したエピソードも、「へえ〜」と言ってしまうこと請け合い。そして警護のプロであるはずの護衛官の、意外に人間臭いエピソードも明かされる。「皇族って普段どんな暮らしをしているんだろう……?」という、日本人なら一度は抱いたことのある疑問の一片が解き明かされている点は、本書の注目すべきポイントだと思う。

 とにかく、エッセイの語り口と池辺葵による絵のタッチがうまく噛み合っており、とかく内容的に固くなりがちな皇族周りの話もするすると読めるのが印象的。皇族の生活を垣間見られる内幕ものとしても、異国の名門大学での留学生活を描いたコミックエッセイとしても読むことのできる、他に類のないコミックである。

■書誌情報
『マンガ 赤と青のガウン 第1巻』
著者:彬子女王(原作)、 池辺葵(漫画)
価格:1,540円
発売日:2026年3月25日
出版社:新潮社

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