【漫画】不妊治療が続くと感情が荒むのはなぜ? 当事者の葛藤に触れるエッセイ『不妊治療体験談漫画』

エッセイ漫画を読むと、自分の人生を歩んでいるだけでは気づけない感情を知ることができる。小森うにさん(@uni_lapin_usa)のノンフィクション作品『不妊治療体験談漫画』は、不妊治療を続ける人の葛藤や心情に触れられる作品だ。
Xに投稿された「自分がどんどん嫌いになっていく」というエピソードは、妊娠・出産を経た友達への嫉妬、さらにはそれによる自己嫌悪が描かれた生々しい内容だ。自身の体験や感情を包み隠さず表現している本作を、どのように制作しているのか、小森さんに話を聞いた。(望月悠木)
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表情や演出のバランスを意識した作画
――なぜ『不妊治療体験談漫画』を制作しようと思ったのですか?
小森:「これまでの自分の治療経験を一度きちんと棚卸しして、作品としてまとめたい」と思ったことが大きなきっかけです。描きながら「あの時、自分はこういうことを考えていたんだ」と振り返ることで、必要以上に落ち込まなくなったり、自分のことを少し受け入れられたりする感覚があります。
——「不妊治療」をテーマにした本作ですが、描くうえで注意したことは?
小森:医療情報として断定しすぎないことは意識しています。自分が受けた説明や検索結果や治療経験をもとに描いていますが、不妊治療は本当に人によって状況が異なるので。必要なところでは注釈を入れたりなど、“人による”という前提が伝わるようにしています。
また本作は医療解説漫画というより、自分自身の心の動きを描いた漫画だと考えています。治療の結果や経過は人それぞれですが、治療中に感じる孤独や嫉妬、焦り、自己嫌悪のような感情には、形は違っても重なる部分があると思います。読者に「自分はなぜここに共感したのか」「なぜこの場面が苦しく感じたのか」と、「自分の気持ちを考えるきっかけにしてもらえたら」と思っています。
——テーマに反して絵柄がとても可愛らしく、楽な気持ちで読み進めることができました。
小森:重いテーマだからこそ、「読み進めてもらいやすい絵柄にしたい」という気持ちはあります。最初はもっとシンプルな絵柄でしたが、描いていくうちに、まぶたや瞳、眉毛などを少しずつ足して、感情が出しやすい形になっていきました。可愛らしさや読みやすさは残しつつ、悲しい場面ではちゃんと悲しさが伝わるように、表情や演出のバランスは考えています。
——ちなみに、うにさん自身はうさぎの被り物をしていますが、キャラデザで意識したことは?
小森:もともとうさぎが好きで、以前4コマ漫画を描いていた時に自分をうさぎのキャラクターとして描いていたことの名残でもあります。長編の体験談漫画にする時に、完全に動物の姿のままでは治療を受けている場面のリアリティや感情表現が難しいと感じたので、人間の顔や体にうさぎの帽子をかぶせることにしました。
——3月下旬に投稿された「自分がどんどん嫌いになっていく」はしんどい内容でしたね。
小森:描いていた時は、かなりしんどかったです。当時の日記を読み返しながら描いていたので、思い出して泣くこともありました。やはり自分の中の綺麗ではない感情を、人に見える場所に出すため、このエピソードを描くことに怖さがありました。ただ、「ここを避けてしまったら、この漫画を描く意味が薄れてしまう」と思い、なんとか描き切りました。
――今後の漫画制作の展望を教えてください。
小森:まずは本作を最後まで描き切る予定です。今後は書籍化も予定しており、完全監修版として再編集し、描きおろしも加えながら、よりきちんとした形で届けられたらと思っています。漫画に限らず、私が一番作りたいのは、本音を吐き出したり、自分の気持ちを整理したりできる場です。漫画もその一環で、自分自身が描くことで治療中の気持ちを整理してきました。読んでくれた人にも、自分の不妊治療やその時の感情を振り返ったり、見つめ直したりするきっかけになったら嬉しいです。
























