レシピ本、なぜデジタル時代でもベストセラー続々? 宝島社編集者に聞く、多様化するレシピ本の世界

レシピ本、なぜベストセラー続々?

 映像配信や電子書籍など、デジタルコンテンツが隆盛を誇る中、変わらぬ支持を受けているのがレシピ本だ。実際、書店に行くと、レシピ本コーナーはお手軽系から凝ったものまで、実にさまざまなジャンルが並んでいて、選ぶのに迷うほど。

 そこで今回は、りなてぃの「一週間3500円献立」シリーズが累計139万部以上、山本ゆりの「syunkanカフェごはん」シリーズが累計800万部以上と、数多くのベストセラーを抱える宝島社のムック局第2編集部編集長である瀬尾香織氏に、その人に合ったレシピ本の選び方と、レシピ本が売れる理由を聞いた。

なぜレシピ本は売れ続けているのか?

ーーさまざまな種類のレシピ本がありますが、その中での売れ筋の傾向というのはあるのでしょうか?

瀬尾:お仕事をされているお母さんが読者に多いこともあって、時短・簡単をテーマにした本が売れています。また、読者には40~50代の女性も多く、ちょうど子どもが大きくなって、毎日の料理に時間をかけられるようになる世代なんです。この年齢になると、ちょっと凝ったものやお菓子などを作る余裕が出てきて、簡単・時短にプラス、少し手間を加えたレシピの本も支持される傾向があります。

ーー宝島社では、年間で何冊ぐらいレシピ本を出版していますか?

瀬尾:年間では60冊ぐらいです。近年、増える傾向にあります。働くお母さんが、右肩上がりに増えていることが影響していると思います。

ーー出版点数の増加は、コロナ禍の影響もあったのでしょうか?

瀬尾:あの頃は外食もしにくく自宅にいる時間が長かったので、レシピ本はとても売れました。『りなてぃの一週間3500円献立』はちょうど2020年の発売で、ベストセラーになりました。コロナ禍が拡がりだした時期だったので、とても記憶に残っています。

ーーインターネット上ではさまざまなレシピサービスがそろっています。それでもレシピ本が売れるのは、どういう理由からでしょうか。

瀬尾:レシピサービスは多くの利用者がいますが、それに反比例してレシピ本が売れなくなるということはないんです。ネットが盛り上がることで、本で読みたいと考える人たちも増えているように感じます。

 たしかにネット上にはたくさんのレシピがありますが、たくさんありすぎて逆に迷ってしまいます。私自身の話になりますが、自分ひとりのための料理なら、たとえ口に合わなくても気にならない。ですが、家族や誰かのために料理をするとなると、失敗したくないんです。確実においしいものを作りたい。ネットではなく、厳選されて一冊にまとまった本を参考にしようと考える人が多いんだと思います。

ーー編集されている分、信頼度は高いということですね。

瀬尾:あとは執筆してる料理家さんのファンだから、というのもあると思います。料理家さんによって味つけの傾向はあるので、この人のは口に合う、家族に好評だった、という理由で買っていただく方も多いです。

ーーレシピ本を作るときに、重要視していることはありますか?

瀬尾:地味な答えになりますが、使いやすさ、見やすさと正確性です。野菜の切り方も文字で説明するだけでなく、切った材料の写真を入れたり、10人が見たら10人がちゃんと作れるようにしています。表紙は目立つことも大事ですが、中は誰が見てもわかりやすい作りを意識しています。

電子レンジレシピの進化

『山本ゆり iwakiの耐熱調理容器でおいしいレシピ』より

ーーそれでは、おすすめのレシピ本を教えていただけますか。最初はひとり暮らしを始めたばかりの新入生、新社会人の方におすすめのレシピ本をお願いします。

瀬尾:『山本ゆり iwakiの耐熱調理容器でおいしいレシピ』です。保存容器で有名なiwakiの耐熱ガラス容器がついていて、プレゼントであげても、とても喜ばれます。フライパンも鍋も使わずに付属の容器で調理ができて、そのまま器としても使えて、余ったらそのまま冷凍保存も可能と、これひとつで完結するんです。洗い物も少なくなるので楽。レシピには材料の分量や、レンジも何ワットで何分と細かく書いてあるので、料理をしたことがない人でも、簡単においしく作れます。

『村上祥子の電子レンジでおいしいシニアごはん』より

ーー電子レンジを使うレシピ本は増えているのですか?

瀬尾:増えています。なにより電子レンジ自体が進化していて、昔みたいに加熱ムラができることもないので、おいしく作れるようになっています。同じ電子レンジレシピでは、『村上祥子の電子レンジでおいしいシニアごはん』もおすすめです。村上さんはずっと第一線で活躍されていますが、電子レンジレシピの先駆けで、何十年も前からさまざまなレシピを開発されてきました。

 たとえば煮物はたくさんの食材を煮込んだほうがおいしくできますけど、ひとり暮らしやシニア夫婦だと一度で食べきれずに残ってしまい、しばらく同じものを食べ続けなければなりません。その点、電子レンジなら少量でもおいしく作れるので、ぴったりなんです。

ーーシニアの場合、火を使うことに不安もありますが、レンジ調理ならその心配もありませんね。

瀬尾:ガスコンロだとうっかり火をかけっぱなしにして焦がしたりといった、危険な場面もありますが、その点、電子レンジなら安心。また、最近は夏がかなり暑く、キッチンで火を使っていると熱中症の危険もありますから、電子レンジを活用してほしいですね。

節約、食べ盛り、健康志向……それぞれのおすすめレシピ本

『りなてぃの一週間3500円献立』より

ーーでは次に、節約したい若い夫婦世帯向けには何がおすすめですか?

瀬尾:やはり「りなてぃの一週間3500円献立」シリーズです。物価が上がっていますが、それでも鶏むね肉などのお買い得な食材を使って、一食200~300円で作れるレシピがたくさん載っています。

ーーりなてぃさんはもともとインスタグラムでレシピを公開していました。SNS発のレシピ本は多いのですか?

瀬尾:2020年ぐらいからすごく増えました。それ以前は同じSNSでもブログが多く、人気の山本ゆりさんもブログ発です。SNS発が増えたのはスマホのカメラ機能が向上したり、料理家さんの撮影技術や動画編集技術が上がったことで、ネット上でバズりやすくなったことも大きいと思います。

『100万人が保存した! 家族に大好評なあこの簡単ごはん』より

ーー食べ盛りの子どものいる家庭向けには何がおすすめですか?

瀬尾:それでしたら、実際に3人兄弟の母親であるあこさんの『100万人が保存した! 家族に大好評なあこの簡単ごはん』です。おすすめポイントは、子どもたちがあまり食べないもの、野菜やサバとかを、喜んで食べてもらえるように工夫してあるところです。たとえばレンコンなら、素揚げしてのり塩をまぶして、野菜嫌いなお子さんでもスナック感覚で食べられるようになっていたりとか。サバもみそ煮にするのではなく、揚げてタルタルソースで食べるとか。インスタグラムの再生回数が800万以上のレシピもあるので、おいしさは保証済み。今ある食材で手早く作って、家族みんなにおいしく食べてもらいたいお母さんにはおすすめです。

ーー次は、パクパク食べるとは方向が違いますが、体の調子を整えたい人向けにはどうですか?

『グルテンフリーのおぼん献立』より

瀬尾:『発酵食品ソムリエ・ここえみの塩麹・しょうゆ麹で毎日のおかず』と、『グルテンフリーのおぼん献立』(たかせさと美)です。麹とか発酵調味料は難しそうなイメージがありますが、いつもの定番おかずに取り入れるスタイルなので、気軽に作れます。

『グルテンフリーのおぼん献立』は、小麦粉や精製された白砂糖を使わず、素材の旨味をいかしたレシピです。それらの食材が体の不調の原因になっている場合もありますし、グルテンフリーを実践することで腸内環境も整うのでおすすめです。体にいい食事は、味が二の次になっているものもありますが、それでは長く続けることはできません。おいしく食べてもらうためにも、ぜひレシピ本を参考にしていただきたいです。

『包むだけ! ワンパン蒸しレシピ』より

ーーせいろものが流行っていますが、蒸し料理ジャンルでおすすめはありますか?

瀬尾:せいろを使うと手入れが面倒なので、せいろを使わない『包むだけ! ワンパン蒸しレシピ』はどうでしょうか? クッキングシートで包んで水をさしたフライパンで加熱するレシピです。見栄えもよくて、食べ終わったらシートを捨てるだけなので洗い物も楽ですよ。

『syunkonカフェごはん8 読むとやる気が出る簡単絶品レシピ』より

ーー最後にこれ1冊で十分という大定番はありますか?

瀬尾:やはり人気の山本ゆりさん『syunkonカフェごはん8 読むとやる気が出る簡単絶品レシピ』です。個人的にも、忙しい毎日のごはん作りに助けられています。かゆいところに手が届くというか、料理をしていて困ったときの、的確なアドバイスがちゃんと入っているんです。たとえばコンソメスープを使うと書いてあるけど、コンソメがないときにどうしたらいいか。ちゃんと「だしの素でもいけます」ってコメントで書いてあるんです。料理をつくる人に寄り添っている姿勢が、とても好評です。

ーー話を聞いていて、料理をしたくなりました。

瀬尾:料理って、すごく簡単なレンチン料理でも自分で作ると、自己肯定感があがるんです。いろいろうまくいかなかった日でも、自分でなにか一品、作るだけですごく満足感がありますし、気持ちも前向きになります。簡単なものでいいので、レシピ本を活用して料理をしておいしく食べて、毎日を気分よく過ごしてほしいですね。

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