【文芸ランキング】和田竜の歴史小説とダン・ブラウンの7年ぶり新作が登場 日米の人気作家による大長編

2025年11月第1週のオリコン文芸書ランキング第1位は、前回に続き雨穴の『変な地図』(双葉社)がキープ。新作のヒットに引っ張られる形で『変な家2 ~11の間取り図~』(飛鳥新社)も第10位にランクインしている。
今回のランキングで注目したいのは、人気作家による大長編の上下巻が2作ランクインしていることだ。第3位・第4位のダン・ブラウン『シークレット・オブ・シークレッツ』(越前敏弥訳、KADOKAWA)は、『ダ・ヴィンチコード』で世界中にその名を轟かせた<ロバート・ラングドン>シリーズの最新長編である。前作『オリジン』の邦訳が刊行されたのが2018年なので、シリーズとしては実に七年ぶりの刊行だ。
宗教象徴学を専門とする大学教授のロバート・ラングドンが世界各地で様々な謎と陰謀に巻き込まれながら立ち向かうミステリで、トム・ハンクス主演の映画『ダ・ヴィンチコード』が大ヒットしたことで更に幅広い読者を得たシリーズである。謎解き、サスペンス、活劇が混ざり合ったスリリングな展開と、物語を途方もないスケールまで広げて驚かせる点が魅力だ。『シークレット・オブ・シークレッツ』も例に漏れず、親密な仲である純粋知性科学者のキャサリンに同伴してプラハを訪れたラングドンが、物語の序盤から不可解な出来事に巻き込まれていく場面を読むだけでも引き込まれるだろう。人間の意識や脳に関する知識が織り込まれる一方で、超常現象のような謎がラングドンの前に立ちはだかる展開を読むと、脳科学と神秘的な謎を扱う島田荘司作品のようなテイストもある。
もう1冊は第5位と第8位にランクインした和田竜『最後の一色』(小学館)。著者にとっては本屋大賞を受賞した『村上海賊の娘』(新潮文庫)以来、12年ぶりの新作長編である。丹後守護を務めた一色家最後の当主である一色五郎の鮮烈な姿を、長岡(細川)藤孝・忠興親子との苛烈な戦いを交えながら描く歴史小説だ。膨大な資料を駆使しながら既存の作品には無かった「一色五郎像」を浮かび上がらせたことはもちろん、もう一人の主人公というべき長岡忠興の視点で一色五郎という人物を描いている点も良い。同い年の五郎に対してライバル心を燃やす忠興だが、単なる敵愾心ではない複雑な感情が彼の心中にあることが読み進めていく内に分かっていく。一色五郎を単純に英雄視する物語ではなく、多面的な魅力を放つ人物として描こうとする姿勢が見どころだ。
片やプラハを舞台にした現代スリラー、片や戦国時代を舞台にした歴史小説と両者は全く違う興趣の作品だが、上下巻で700頁を超える分量を一気読みさせる点では共通している。今週は大作が目立った文芸書ランキングだった。
























