アニメ化で話題の畠中恵<しゃばけ>シリーズ 週間文芸書ランキングで最新作『あやかしたち』が好調

2025年9月第4週のオリコン週間文芸書ランキングで注目したい作品は、第6位にランクインした畠中恵の『あやかしたち』(新潮社)である。江戸の廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若だんなこと一太郎と、長崎屋に住みつく妖(あやかし)たちの活躍を描いた<しゃばけ>シリーズの第24作だ。
鳴家や屏風のぞきといったユーモラスでどこか可愛らしさもある妖たちの登場を毎回楽しみにしている読者も多いだろう。1篇目の「ふゆのひ」は隅田川が凍るほど寒い冬に、長崎屋にまつわる噂を聞きつけて雪女がやってくるという話だ。さらに表題作の「あやかしたち」では遠方からやってきた妖たちと長崎屋の妖たちが、あることを巡って勝負をする羽目になる。このように本作では、長崎屋以外に住まう妖たちがぞろぞろと出てきて、いつも以上に賑やかな印象になっている。連作短編集としての構成も良く、最後に収められた「みっかだけ」では意外な展開が待ち受けており楽しい。
第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した第1作『しゃばけ』が刊行されたのは2001年のこと。シリーズは今年で25周年を迎えるが、安定した面白さを持つ時代ファンタジー小説だと改めて思う。
その<しゃばけ>シリーズだが、2025年10月より全国フジテレビ系“ノイタミナ”でテレビアニメの放映が開始した。そのアニメ化にともない今年は夏から秋にかけて<しゃばけ>シリーズ関連の動きが活発だった。6月には第22作の『いつまで』が文庫化。また、8月25日発売の『芸術新潮』2025年9月号(新潮社)では「妖たちと生きる しゃばけの世界へようこそ」と題する特集を組んでシリーズを多角的に紹介した。<しゃばけ>シリーズと聞いて柴田ゆうによる可愛らしいイラストが直ぐに思い浮かぶ人も多いだろうが、同誌ではイラストギャラリーとともに表紙絵の制作過程や柴田へのインタビューなどが収められている。
また、杉江松恋によるコラム「『しゃばけ』に流れる時間」ではミステリ小説としての観点から見た時のシリーズの読みどころが解説されていて、これまでシリーズを読んだことが無い人でも手に取りたくなる内容になっている。妖たちが作中で美味しそうなお菓子を頬張る場面が多いのにちなんで、「菓子見本帳」(江戸時代の上菓子屋で作られた商品カタログのようなもの)などを掲載しながら江戸の菓子について語る「江戸の甘味を大解剖」というコーナーも愉快だ。こういう小説作品の理解を深めてくれる雑誌特集の存在は有難い。






















