『都市伝説解体センター』がオリコン文芸ランキング1位に! ますます裾野広がるホラーブーム

先週このコーナーで映像ホラー作品の関連本がオリコンランキングで目立つことについて触れた。現在公開中の映画「8番出口」の小説版(水鈴社)は初版10万部を突破するヒット作となっているが(『8番出口』小説版ならではの仕掛けとは? 映画とともに鑑賞することで立ち上がる“自分自身の物語“)、もともと「8番出口」は個人制作のインディーゲームである。小説や映像作品だけではなく、ゲームも昨今のホラーブームを担っているのだ。
そう考えると2025年9月第3週のオリコン文芸書ランキングの第1位が『都市伝説解体センター 断篇集』(集英社)だったのは納得がいく。「都市伝説解体センター」とはゲームクリエイターチーム「墓場文庫」が制作するミステリーアドベンチャーゲーム。怪異や呪物についての探索や特定を行い、謎の“解体”に取り組む「都市伝説解体センター」の新人調査員・福来あざみが「都市伝説」絡みの依頼を調査していく、という内容だ。『断篇集』は「墓場文庫」の監修のもと、尾北圭人・月並きら・日部星花・円居挽・宮本深礼が書いたスピンオフノベライズが収録されている。日部や円居といったミステリで活躍する作家も執筆者の中にいることからも分かり通り、「都市伝説解体センター」というゲーム自体がミステリのジャンルと親和性があるものになっている。
ミステリとホラーの融和という意味では、第4位にランクインしている知念実希人の『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』(双葉社)にも言及しておきたい。6位の『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』(双葉社)とリンクする作品で、大量殺人事件の犯人の精神鑑定を行った記録の体裁を取っている。作品内にはインタビュー形式のテキストや新聞記事などが挿入され、疑似ドキュメンタリーのような感覚で読める。いわゆる“モキュメンタリー”と呼ばれる作品に挑戦するミステリ作家が今年は特に多い印象を受けるが、知念の二作はその代表例だろう。ゲームからの派生作品やミステリ作家による“モキュメンタリー”小説のヒットと、オリコンランキングを眺めると改めてホラーブームの裾野の広さがうかがえる。






















