【漫画】「動画だと可愛い」言ってる男どう? 思春期の感性を瑞々しく描く『俺と先生の箱庭』

【漫画】「動画だと可愛い」言ってる男

 「将来苦労するぞ?」「ブスで化粧厚くてビビったんだよね」。大人や同級生が口にした、自分や他者への無神経な言葉を耳にし、心をすり減らしていく。そんな日々を送る男子生徒・真木は、今日も保健室へ足を運ぶ。漫画『俺と先生の箱庭』で描かれるのは、真木と保健室の先生が共にするひととき。

 スマホで面白い画像を見たり、一緒に散歩へ出かけたり、先生の何気ない独り言を耳にしたりーー。2人の過ごす時間は穏やかで、目にしているこちらも心地よさを感じる。

 そんな本作の見どころとして挙げられるのは、終盤に真木が先生へ向けて「…俺がどんな人間になったら/…先生は嬉しい?」と問いかけた場面だ。先生の返答は作者・kaboxさん(@kabox_c)の視座、真木やこどもに対する思いがうかがえるものであった。

 生徒と先生、こどもと大人として2人の関係を描いた思いなど、kaboxさんに話を聞いた。(あんどうまこと)

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『俺と先生の箱庭』(kabox)

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

kabox:本作は2025年秋に開催された同人誌即売会「J.GARDEN」にて、友人と参加した際に、合同誌とは別で出したコピー本です。中高生の頃に出会った、ちょっと変わった先生を思い出しながら描きました。

 ときに生徒から小馬鹿にされたりなど、学校内で上手く生きている方ではない。けれど先生も完璧ではないといった「人間味」を見せてくれていた大人って、実はすごく貴重だったなという思いが創作の根源にあります。

ーー本作に登場する先生の少し変わった部分、個性が光る場面として「秋の栞になるね」と話す場面があるかと思います。「栞」というモチーフを用いた背景は?

kabox: 栞は読んだ本のページに差し込むものであり、とても個人的なもの。外からは見えにくく、自分だけの世界として閉じ込めることができるものだと思います。そんななか人生の記憶や思い出も栞に似ているなと思っています。

 落とし物を手渡してくれた時の先生の顔とか、あまり仲良くない先輩が珍しく「お疲れさま」と言ってくれたとか。決して大きな出来事ではないけれど、ふとした瞬間を細やかに覚えていることがある。その時に「きっと私は栞を挟んでいるんだろうな」と思い、本作では真木くんにも栞を挟んでもらいました。

ーー真木くんの相手として「保健室の先生」を選んだ背景は?

kabox:保健室は学校の中では離れ小島のような場所で、体調が悪いときや友人のお見舞いなどでしか入れない、聖域のような雰囲気を感じます。そんな保健室にいる先生は授業などで日常的に関わることができない分、生徒からしたら何者なのかわからない、特別な立ち位置にいる大人だと思っています。

 本作では「もっとこうした方がいいぞ」とか、真木くんに何かを言いたくなかったので、生徒から距離が遠い保健室の先生を相手として描きました。

ーー2人の関係を描く上で意識したことは?

kabox: 前提として、自分は創作物だとしても生徒との距離が近すぎる先生は大人としてよろしくないという線引きをしています。ただ真木くんが先生に自分の弱い部分を見せていたように、先生も真木くんの前では自分をさらけ出せていたと思います。「まるで押し花みたいだね」「秋の栞になるね」といった独り言は、たぶん真木くんの前でよく出ていたんじゃないかなと。

 2人はお互いに自分の柔らかい部分を見せることができる関係であり、精神的な距離は十分に近い。たぶん「先生と生徒」という関係でなければ良い友人になっていたかもしれません。それでもあえて「先生と生徒」という枠にはめることで、2人の関係に距離を置きたかったのです。とくに本作の最後、先生が真木くんに返答する言葉は悩みました。

ーー真木くんが先生へ「…俺がどんな人間になったら/…先生は嬉しい?」と尋ねた場面ですね。

kabox: このときの真木くんは先生に「甘えている」んですよね。真木くんはコミュニケーションが上手ではないので、自分の思っていることをそのままぶつける、さらけ出すことしかできない。相手が返答しやすいかどうかという配慮もなく、自分が思っていることをそのまま質問をしてしまう。

 そんな拙さ、純粋さ、未熟さに対して、先生は真木くんが欲しがっている言葉ではなく「先生と散歩をしてくれる今の君のままが嬉しいかな」と答える。その言葉は先生にとって本心だったと思いますし、真木くんにとってもうれしかったはず。

 真木くんが先生に尋ねる直前「今日は一日教室にいたの?」と先生が話す1コマがあり、この日は真木くんなりに頑張り出した証だと思います。先生も「教室に行けてえらいね」とは言わない。賞賛ではなく観測してもらえることが真木くんにとっても救いになるのではないか、真木くんのことを思って距離を縮めないようにしよう。そんなことを先生は考えていたと思います。

ーー今後の目標を教えてください。

kabox: これからも私なりのブロマンスの距離感を測る漫画を耕していけたらなと思います。この2人の続編も、時間があったら描きたいです。

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