知念実希人の“スマホ型”ホラー小説、オリコン文芸ランキング1位に 恐怖を追体験できる作品に脚光

知念実希人の“スマホ型”ホラー小説に注目

 8月第3週のオリコン週間文芸書ランキング(2025年09月01日付、推定売上部数をもとに算出)は、知念実希人の『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』(8月20日発売、双葉社)が第1位を獲得。前週1位だった東野圭吾『マスカレード・ライフ』(集英社)が2位にランクインし、それに次いで背筋『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)が第3位に入る結果となった。木村拓哉・長澤まさみ主演の映画でも著名な〈マスカレード〉シリーズが根強い人気を見せつけるなか、ホラー2作品が上位を占めているランキングを見ると、やはり現代のホラー小説の活況ぶりが伺える。『近畿地方のある場所について』は8月の映画公開に合わせて文庫版も発売されたが、単行本版も引き続き好調のようだ。『近畿地方のある場所について』についてはミステリ評論家の千街晶之が当媒体にコラムを寄せているので、興味がある方はそちらをご参照いただきたい。(参考:『近畿地方のある場所について』単行本とは異なる文庫版の謎めいた情報の正体ーー書評家・千街晶之が対比

 ランキング内で特に注目すべき作品は、第1位の『スワイプ厳禁 変死した大学生のスマホ』だろう。この作品はそもそも刊行形態からして特異で、実際のスマートフォンサイズに合わせた判型になっている。見た目のデザインもスマホそのもの。これによって主人公が味わう恐怖を読者がさも自分が体験しているかのように受け取ることが出来る。疑似ドキュメンタリー形式のホラーを含め、昨今のホラーブームでは「読者が追体験できること」がひとつのキーワードになっていると思われるが、本書もそれを良く表している一冊だろう。「追体験」がキーワードといえば、文芸書ランキングの第7位にランクインした都市伝説系Youtuberとして人気の灯野リュウ(ミルクティー飲みたい)が初めて手掛けた小説である『渋谷神域』(KADOKAWA)にも、物語の舞台を歩いて体験できるという特製地図がついている。

 『スワイプ厳禁』の著者である知念実希人は橋本環奈主演でドラマ化された〈天久鷹央〉シリーズなどの医療謎解きミステリの書き手として知られる作家だが、『スワイプ厳禁』では本格的なホラーに挑戦している。9月には『スワイプ厳禁』と連動した『閲覧厳禁 猟奇殺人犯の精神鑑定報告書』(双葉社)の発売も予定されているとのこと。同じ8月刊行の小説ではメフィスト賞作家の岡崎隼人が『書店怪談』(講談社)という疑似ドキュメンタリーの要素を持った怪談本を刊行しており、ホラーブームの中で同ジャンルへ新たに挑む作家もいっそう増えつつある気配だ。

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