【漫画】京都、夕暮れ、アスファルトの熱……広い交差点の情景を郷愁たっぷりに描く漫画『漕ぐ』

“七本松花屋町、それは/京都駅の北西2.5キロに位置するただっ広い交差点”
京都のとある交差点で感じたことを描いたエッセイ漫画『漕ぐ』がpixivに投稿されている。広い交差点を、仕事帰りの夕方に自転車で通過した作者・うつつ寝さん(@ututu_ne)。交差点の真ん中に差しかかったときにうつつ寝さんが目にした光景は幻想的で、美しく、穏やかなものでーー。
京都で暮らすうつつ寝さんに本作を創作した背景や、各描写で意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと)
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ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
うつつ寝:本作は漫画を描き始めたばかりの頃に描いたものです。わたしがよく通る交差点で感じたイメージをそのまま簡素に表現してみたいなと思いました。
ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?
うつつ寝:交差点でアスファルトと水面を重ねるシーンですね。「平らなアスファルトは人工的だと思っていたけれど、その平面な様子は水面と似ているかも?」という気づきを、水の雰囲気が少しでも伝わるように考えながら表現しました。
ーー本作の中盤「夕刻、帰り道」のモノローグからはじまるページの1コマ目、空気が渦巻くように見える空の描写が印象的でした。
うつつ寝:空に雲が浮かぶ日の帰り道、1日の疲れも影響してか、浮かぶ雲が少々どんよりと重く見えました。そんな雲の雰囲気を描写できたらと思いながら描きました。空のグレーはデジタルツールを用いて描いているのですが、この時はまだ色付けに慣れていなくて試行錯誤しました。ただ不慣れが高じて、絵に深みが出たのだと思います。
ーー本作を描くなかで使用された画材は?
うつつ寝:A4サイズの紙にシャープペンシルで下描きし、そのままシャープペンシルで清書します。その原画をスキャンして濃さなどを調整しながら、制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」で枠やトーン、黒ベタなどを足して仕上げています。
アナログツールとデジタルツールの両方を使いながら漫画作品を描いていますが、もともと紙とペンを用いて絵を描いていたので、線まではやっぱり紙に描きたいタイプです。
ーー本作で描いた1日はどのような1日だった?
うつつ寝:本作で描いた夕方は仕事帰りで、いつも通り頭が疲れていました。思考も狭くなっていたところで広い交差点に出て、精神的にも解放されたのだと思います。何年も前に滋賀県の川でカヤックに乗った際の心地よさを思い出したことも相まって、交差点のアスファルトと水面が重なりました。
ーー普段から自転車を漕いでいる?
うつつ寝:車を持っていないため京都市内なら自転車でどこへでも行きます。自転車に乗っていると何だか調子がよくなるし、京都の街は広くないので自転車で移動することがおすすめだと思います。京都には個性的なお店も多いので、自転車を漕いでいても飽きません。
……とは言っても、狭い道はちょっと閉塞感があります。そんな中、漫画に描いた交差点は珍しく広いところなので、気持ちもぽかんと広くなって気持ちがいいです。
ーーうつつ寝さんは現在、SNSやホームページにて本作のような短編漫画や4コマ漫画を数多く掲載しています。漫画を描きはじめたきっかけは?
うつつ寝:絵を描くことは幼い頃から好きで、中学生くらいまでは漫画もよく読んでいました。大学では日本画を専攻していましたがあまり手応えを得られず、大学の卒業後は絵をほとんど描かなくなっていました。ただ生きる中でアウトプットされない「何か」が、自分の中に自覚なく溜まっていたと思います。
そんななかコロナ禍のステイホームを機に、久々に少年漫画や青年漫画にハマりました。「漫画はやっぱり楽しいなー」と改めて実感し、ふと「自分の中に澱のように溜まった『何か』を漫画で表現したいな」と思って。その「何か」は今振り返ると、生きづらさや憤りのようなものだったと思います。試行錯誤の末、手応えを得られたのは日常を描いた漫画でした。
ーー今後の活動について教えてください。
うつつ寝:のんびりとした人間なので「これは必ず達成するぞ!」という目標はないのですが、漫画を描くことはすごく面白いので続けていきたいです。言葉だけではうまく言えないのですが、読んだ人の目線が少し変わったり、思考の軸がちょっとだけずれることで肩が軽くなるような漫画が描けたら最高だなと思います。
■うつつ寝のHP:https://ututune.com/






















