【漫画】うつから立ち直れたのはインコのおかげ? 動物とのあたたかなふれあいを描く『私が漫画を描き始めたわけ』

「人に歴史あり」と言われるように、人の数だけ物語がある。ただ、同様に動物の数だけ物語もあるのだろう。そして、動物を飼っている人との物語であれば、その内容はとてもあたたかいもののなのかもしれない。
Xに投稿された『私が漫画を描き始めたわけ』では、画家の谷小夏さん(@konatsu_e)が定期的に更新している、セキセイインコ・みっちゃんと家族との毎日を描いた絵日記『プジェ日記(@tanikonatsu_2)』が誕生した背景が描かれている。
これまでの人生の中でいろいろな動物と接する中で、その時、その後に感じた谷さん自身の心情が繊細に描かれている本作をどのような思いで制作したのかなど話を聞いた。(望月悠木)
続きを読むには画像をクリック

描いて良かったと思える作品
――漫画を制作するようになった経緯は?
谷:私は画家業を本業にしているのですが、昔から動物に救われて生きてきました。「動物たちのために何かしたい」という気持ちがあり、画家業のほうで2019年から動物の保護施設に絵の売り上げを寄付する活動をしています。
――とてもすてきな活動ですね。
谷:ただ、「それだけでは足りない」「絵を描けるスキルをもっと生かせないか」と考えた時、“漫画”という絵よりも広まりやすい媒体で動物への愛情が深まるような作品を描いて発信しようと決めました。
――『私が漫画を描き始めたわけ』は谷さん自身の人生にも触れる内容でした。
谷:画家業から突然日常漫画を描き始めたことに驚かれた人もいたので、よくその経緯をお話ししていました。本作は出会う人に口頭でよく話していたことを漫画にしたものです。
——飼っていたペットとの別れ、うつ病が重かった時の記憶などが描かれていました。本作を制作している時の心境はどうでしたか?
谷:天国にいる子たちについて考える時、「もっとこうしてあげたら良かった」と後悔が必ず出てきます。本作を描いていた時も、そういった後悔を思い出して泣きながら描きました。ただ、「その分、今家にいるみっちゃんを大切にしてあげたい」と思いを抱きながら制作しました。
——制作中は精神的にとてもつらそうな印象ですが……。
谷:特に私自身へのメンタルへの影響はなかったです。うつの時にうつについて描くのはつらかったと思うので、「調子が良くなったからこそ描ける話だな」とは思いました。
――今、本作を描き終えての心境は?
谷:この話は普段制作している短編作品と違って踏み込んだ内容なので、「読んでくれた人の心に届くメッセージがあるのではないか」と思っていました。いろいろなコメントをいただけたので「描いて良かった」と思っています。
漫画を描くうえでの難しさ
——普段は画家として活動している谷さんですが、エッセイ漫画である「プジェ日記」を描くうえでは、本業とはまた違う苦労もありそうですが。
谷:本業は画家なので、絵は描けます。また、実際にあったことを書けば良いため、「簡単に漫画が描けるだろう」と思っていたのですが、絵と漫画のスキルは微妙に違っているので、「面白い出来事があれば面白い漫画が描けるわけではない」という壁にぶつかりました。絵はうまいが漫画は下手というか……。
――同じ“絵を描く”でも違うのですね…。
谷:そうですね。ただ、恥ずかしさを押し殺して発表すると、読者さんのコメントから「私の漫画のどこが面白くて、どこが面白くないのか」がわかるようになってきました。読者さんの反応を見ながら今の漫画を描いているので、「プジェ日記」は読者のみなさんと一緒に作り上げてきたと思っています。
——絵本のような緩くて可愛らしい絵柄も魅力的な「私が漫画を描き始めたわけ」「プジェ日記」において、作画で意識していることは?
谷:だんだんと画家業で描いている絵とは違う“漫画の絵”が描けるようになってきました。描き始めた時と一番変わったのは人間の頭身です。普通に描くとみっちゃんは人間と比べてかなり小さくなってしまうので、人間の頭を大きくして人間の表情やしぐさと、みっちゃんのかわいさが画面に両立できるように作画しています。
――今後『プジェ日記』をどのように制作していきたいですか?
谷:「『プジェ日記』を読んでわが家の子もさらにかわいく思えるようになった」「鳥がこんなに賢いなんて知らなかった」と言ってくださる読者さんがいます。「『プジェ日記』は間接的にどこか遠くの動物たちを幸せにできているのかもしれない」と思うと、「『プジェ日記』をもっと多くの人に読んでもらえたら、もっと多くの動物たちの役に立つのではないか」と考えています。「これからもさらにたくさんの人に読んでもらえる絵日記漫画に成長させたい」と思っています。






















