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「土」をテーマにこんなに面白い本が書けるとは! 驚異のスケールで描かれる話題の新書『土と生命の46億年史』

そこには大学・研究機関で長年にわたり土の研究を続けてきた著者の、歴史を〈これからの生活に生かそうとする執念〉であり、〈手触りへのこだわり〉が隠されているに違いない。本書の後半では、人口の増加に伴う農業の拡大・発達が土を酷使・劣化させ、食糧危機や環境破壊を引き起こしている現状を取り上げ、肥沃な土を維持する方法を考える。土の研究者は危機を前に、自然の摂理だと悲観もしなければ、未来の人類が解決してくれるだろうと楽観もしない。では何をするのかといえば、外から見ると土いじりと同じではないか?と思うような、何億年も掛けずに人工的に土を作るための試行錯誤を繰り返していくのである。
〈鉱物と微生物の混合物が物質を循環し、土を再生する仕組み〉を作るべく、岩石粉末に微生物カクテルを接種する「乳酸菌飲料作戦」に、ストッキングに詰めた岩石粉末を天然林に埋設して微生物を移住させる「ぬか床作戦」。読者が「何だか楽しそう」「自分でもできるかも」と少しでも思ったら、著者としてはしめたものだろう。この本で伝えたかったという、〈土を作ることは難しかったという実感と、やり方次第では不可能ではなさそうという希望〉を、その時点で共有できているはずなのだから。
■書誌情報
『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』
著者:藤井一至
価格:1,320円
発売日:2024年12月26日
レーベル:ブルーバックス
出版社:講談社























